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リミッツ・オブ・コントロールのtulpenのレビュー・感想・評価

5.0
ジャームッシュはずっと変化し続けて変わらない。
特に、あの間が…。

解りきった結末に安心し、人のかっこいいが自分のかっこいい、そんな観客は困惑させてほったらかす。
並走ならまだましで、後ろから肩を叩いて媚びてくる映画が多い中でいつも、半歩または1歩リードして背中を見せるジャームッシュ。

一枚の絵画のような景色は日常にたくさん転がっているのだと、
カメラが映し撮るその何でもないけど美しいカットが額縁に収まってしまう。

とても好きだったのは生成の布にくるまれたまま壁にかかっていた絵。
黒縁の眼鏡の女の人の思わず手を伸ばして触りたくなるような柔らかそうな乳首。
ガエルの手の甲に描かれていた青いドット模様。
ティルダが拡げた透明なビニール傘。
部屋の中が一瞬にして暗い夜に移り変わった瞬間。
殺し屋に寄り添って眠る女。
ガエルの持ってたタバコケース。

そして何よりも好きなのはラストだ。
スクリーンがシャッターみたいに暗転する最後の瞬間の間合いがいつも最高でニヤリとしてしまう。
前作『ブロークン・フラワーズ』でほんのちょっと昔を振り返って遊んだ後、この行間たっぷりの映画を撮った。

エンドロール最後の一行に指笛を吹きたくなるような気分でした。

2009.9/30 (47)
シネマライズ
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