虎舞羅ーコブラー

アングスト/不安の虎舞羅ーコブラーのレビュー・感想・評価

アングスト/不安(1983年製作の映画)
3.4
公開禁止から37年、遂に「本物の異常」を我々は目撃する…。

1980年のオーストリア、実在する殺人犯ヴェルナー・クニーシェックが起こした事件を元にした猟奇的カルト映画。

去年の公開当時から、日本全国のホラー映画ファンから注目を集めていた本作。しかし公式が言及している「これは一般的な娯楽用ホラー映画ではありません。」という言葉の通り、絶対に一般ウケはしません。
普通のホラー映画みたく"襲われる側"からの視点ではなく、"襲う側"の心情や思想についてを語りながら進んでいきます。近年の映画だと「ハウス・ジャック・ビルト」が最も近いですね。あちらとは違い上映時間はかなり短めですが、それでも娯楽を求めてしまうと苦痛に感じる様な映像や展開は変わらないのではないでしょうか。
色々言いましたが、“あるケースにおける殺人鬼の思想”を徹底的に掘り下げた点はかなり評価出来ると思います。私自身、「何かしら事件を起こす人は、必ずそこに至るまでのバックボーンがある。それがない犯罪者はいない。」という考えなので、この作品での犯人Kのバックボーンは納得いくものでした。
サディズム的嗜好から犯行に繋がる犯罪者の方も実際にいるので、その当事者の“心理的不安定さ”を激しい独特なカメラワークで描くのは中々凄い発想だと思いましたね。

娯楽目的で見るとかなりの肩透かしを食らうかも知れませんが、独特で刺激的な心理描写は見ものでした。
興味があれば是非!