悪女というと大抵は男を色仕掛けでたぶらかしたり、言葉巧みに取り入って近づくというイメージがあるが、この映画のヒロイン・ナンシーは違う。彼女は人前では明るく優しい普通の女性で、男に近づくときもそれは変わらないし男と結ばれてからも特に変化はない。だからこそ彼女が時折見せる妙な言動に付き合う男同様ドキッとさせられる。後半ナンシーが隠していたあるものが見つかっても、「もっとあったはずだわ」とあっけらかんに言うシーンは並のホラーより怖い。そしてそこで彼女が次々と男に近づいていく理由がわかってくる構成も巧妙。
彼女が悪女になる原因となった幼少期のトラウマ、宝石の入ったペンダント、彼女が行ってきた悪事が亡霊のようにナンシーに襲いかかるラストも見ごたえ充分。そして見終わったあとタイトルの『危険な女』がこの映画にぴったりだと思えるはず。