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夢のチョコレート工場のWILDatHEARTのレビュー・感想・評価

夢のチョコレート工場(1971年製作の映画)
4.6
『王の帰還』


↓ネタバレなので読まないでね!

ウィリー・ウォンカが普段隠遁しているのであろう書斎の全ての家財道具が半分欠けていることは、心の内の欠落を長きに渡って埋め合わせることが出来ず、決して満足を得られなかったウォンカの孤独を暗示しているように感じられる。

ウォンカはきっと人間の純粋さを深く愛していながらも、同時に強欲で唯物主義で想像力や遊び心を失ってしまった現代人たちに失望していたがために、自らが造り上げたチョコレート帝国に身を隠すように閉じ籠ってしまったのだろう。

ゴールデンチケットのアイディアは、帝国の王であるウォンカが自分の跡継ぎとなるのに相応しい人間らしい「心」を持った王子を探し出すために、隠遁の人生のさなか勇気を振り絞った乾坤一擲(けんこんいってき)の最後の賭けだったのかも知れない。
そんなウォンカの切なる願いは、果たして叶えられるのだろうか・・・

一方でチャーリーの純朴さや貧しい生い立ち、お互いの幸せを願い合う家族たちの思いについても映画の前半でとても丁寧に描かれていて、チャーリーの夢を叶えてあげたいという一家の温かな心情が物語の前半を感慨深いファミリードラマに仕立て上げている。


そして、チャーリーとウォンカ、二つのドラマが交錯した時に起こる化学反応の美しさと言ったら・・・!

それはたとえば、ウォンカベーター(ウォンカの秘密兵器であるエレベーター型航空機)に乗って上空へと舞い上がった時眼下に広がる、まるでチョコレートをいっぱいに敷き詰めたかのような街の光景(カカオ色の屋根の家々)である。

そして、街を一望する光景をバックに繰り広げられた、感動的な王位継承のシーンである。
(貧しくとも純粋なハートを失わなかった少年が王位を授かった瞬間の、あの瞳の輝き!・・・まさに映像で描かれている通りの天(空)にも昇る気分だったことだろう。)
工場の中だけでなくチャーリーたちが住む街全体がこの王位継承のときを待ち続けてきたのだという多幸感に満ちた絵が浮かび上がる、映画という媒体でしか描けない極上のクライマックスがここにはある。

このファンタジー映画はまさしく「王の帰還」を描いた寓話だったのだ。

最高にハッピーな奇跡を目撃出来たからにはやっぱりこの歌で三人を祝福せずには居られないな。

♪There is no life, I know
to compare with pure imagination ...♪
(♪夢を見る人生ほど、素敵な人生は無い)


↓ジョシュ・グローバンの美しい歌声による上記のテーマ曲のカバー☆
Pure Imagination / Josh Groban
https://youtu.be/CIt2p8g4zPU?si=m2WiXkUQyXzzlfZo
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