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スーパーマン4/最強の敵のnoteのネタバレレビュー・内容・結末

スーパーマン4/最強の敵(1987年製作の映画)
3.1

このレビューはネタバレを含みます

クラーク・ケントは、故郷の両親の農場を売り、納屋に隠しておいたグリーン・クリスタルの最後の1本を持ち帰った。その頃デイリー・プラネット社は三流新聞王に乗っ取られ、とにかく売れる内容で商売しようとしていた。一方、スーパーマンを憎む悪の天才レックス・ルーサーは、甥レニーの手引きで刑務所を脱走する…。

クリストファー・リーブが演じた最後のスーパーマンでシリーズの第4弾。
原題は「The Quest for Peace」は「平和の探究」と訳すことが出来る。
公開当時、私自身は高校生で、ヒーローものは「子ども向け」と興味を失っていたので、ちゃんと見るのは初めて。
当時から悪評があったが、確かに特撮もレベルが下がり、敵も魅力的ではない。
現在も巷の評価は低いのだが、正義の味方として悪を倒すだけでなく、核廃絶という真面目なテーマを持つのが個人的には好感が持てた。
尺も短く、テンポが良い。
「子ども向け」と割り切って童心に戻って見ればそんなに悪くないヒーローものの佳作である。

米ソ冷戦の最中、核軍縮交渉が決裂して緊張感が高まる中、世界を憂う一人の少年から手紙を受け取ったスーパーマンは国連総会に出向き、壇上で核廃絶を約束する。
世界中の核兵器はスーパーマンによってネットに集められ、太陽に向けて投げ捨てられる。
冷戦当時、誰しもが願った「お伽話」がコミカルだが映像で実現しているのが良い。
デカい網に核ミサイルを一まとめにしてぶん投げるなんてスーパーマンにしか出来ない。
ヒーローによる戦争抑止の精神は「アイアンマン」などmarvelヒーローにも受け継がれているのだろう。

世界の核兵器の売人のため、レックス・ルーサーが、その天才的頭脳を活かし、打倒スーパーマンを掲げて創り出すのが、本作の敵となるニュークリアマン。

ルーサーは博物館に展示されているスーパーマンの髪の毛を盗み、そのDNAからスーパーマンより強靭な怪人創造の計画を実行に移す。
公開当時、クローン技術は最先端の科学だったことも懐かしい。

名優ジーン・ハックマンがレックス・ルーサーを自信たっぷりにイキイキと再演しているのが嬉しい。
科学的理屈はさっぱりだが、あの自信家ぶりを見ていると可能なのかも?と思わせる強引な魅力に溢れている。

かくして最強の敵を迎え、死闘が繰り広げられる。
戦いの最中でも自由の女神を救い、エトナ山の噴火を食い止め、爆破された万里の長城を再建するスーパーマン。
スーパーマンと渡り合えるほどの敵役の魅力が弱いのが、シリーズの致命的な欠陥。
知性と経験で唯一魅力的だったのはゾッド将軍くらいか。
本作のニュークリアマンはルーサー曰く、「力はあるが知能は弱い」脳筋キャラ。
太陽光がないと沈黙するという弱点もある。
まるで当時の太陽の下で筋肉を見せびらかしていたアクションスターたちを皮肉ったようなキャラクターだ。
しかし、そこそこ強くてスーパーマンは彼の爪で傷を負わされる。
そこから(被曝して)弱体化するのは反核のメッセージが見て取れる。
グリーン・クリスタルの最後の1本を使い、スーパーマンは復活。
月で戦いを繰り広げ、なんと最後には月を動かして日食を作り出し、動きを止めたニュークリアマンを原子力発電所に投げ捨てる。
ニュークリアマンは死に、そのエネルギーは電力に変換されるというのは、核エネルギーは兵器ではなく、有効利用しようというメッセージか?

核兵器廃絶と平和へのメッセージ性は良かったが、基本的な主軸は「超人同士が戦うだけ」となってしまっているのは残念。
添え物的な恋愛要素は正直なところ蛇足だが、面白さ楽しさが全く無い訳ではない。

大人の目で見ると「ツッコミどころが多いが魅力も確かにある」系統の作品。
科学や物理法則が無視される欠点に目を瞑れば楽しめる作品ではある。

最後にスーパーマンが国連ビルの前で「世界中の人々が望めば平和を実現できる」というスピーチからは、本作のストーリー原案を担当したクリストファー・リーブの真摯な姿勢がうかがえて感動的だ。
ハリウッド製のスーパーヒーロー映画で主人公が世界中の人々に「核兵器廃絶」を訴えるのは珍しく、実に貴重。

「スーパーマンは最強なのに、どうして世界から戦争がなくならないのか?」という疑問に挑んだこの4作目は、スーパーヒーローが世界を守るのではなくて「今後は地球を人間が守るのだ」のだと託された気になる。
出来はさておき、やはりクリストファー・リーブのシリーズ完結篇に相応しいお話だったと思うのだ。
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