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ガン・ホーの一人旅のレビュー・感想・評価

ガン・ホー(1986年製作の映画)
5.0
ロン・ハワード監督作。

エンタメ映画の雄、ロン・ハワード監督が日本のバブル崩壊前の1986年に撮り上げたコメディ映画で、ハワード監督の『ラブ IN ニューヨーク』(1982)で映画デビューを飾ったマイケル・キートンが日系の自動車工場で働く主人公を好演します。

アメリカの田舎町にある閉鎖された自動車工場を日本の自動車メーカーが再建することとなり、日本からやってきた工場経営陣とライン工として働く現地アメリカ人たちとの間で板挟み状態となってしまった米国人ビジネスマンの主人公:ハントの奮闘模様を描いた“文化摩擦コメディ”で、日本が高度経済成長期に発生した日米経済摩擦を物語の背景に据えています。

個人主義のアメリカと同調主義の日本という対照的な国民性&経営手法が災いし、日本人の経営陣と現地アメリカ人労働者との間で軋轢が生まれてしまうという摩擦コメディで、労使調停役を任された主人公が日本人とアメリカ人の間に入って両者の相互理解と協調を図っていく様子が皮肉的で滑稽なユーモアを交え映し出されます。

ジャパンバッシングにまで発展した日米間の深刻な経済摩擦を背景に、お互いに足りないものを補い合うことでよりよい関係を築き上げていく米国人&日本人の相互理解と一体感の醸成を描いて、日米関係の未来にハワード流の一筋の希望を見出していくポジティブな異文化交流コメディで、日本人の仕事観とワークライフバランスの悪さを鋭く見抜いた描写には脱帽であります。

蛇足)
本作に出てくる日本の自動車会社の社名はアッサン自動車。一瞬だけ映る漢字では“圧惨”と表記されています(漢字のセンスが凄い)。
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