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ファイナル・オプションのヒトのレビュー・感想・評価

ファイナル・オプション(1982年製作の映画)
1.5
過激派に潜入するSASの活躍を描く…はずがあまり活躍していない。アクションがクライマックスの大使館占拠にほぼ集中するため、主人公の見せ場はそれまでない。そのうえ潜入の仕方というのが過激派リーダーの女への色仕掛けという凡庸さ。それもバーで1分話しただけでオチてしまうのだから拍子抜けする。ジェームズ・ボンドでももっと手間ひまをかけているぞ。シリアスな題材なのにロジャー・ムーア以上にリアリティのないスパイごっこになっていて、方向性がまるで定まっていない。
主に過激派テロリストの視点を中心に物語が進むので、序盤から中盤にかけて、主人公の影が実に薄い。ではそのテロリストに魅力があるのかというと、もう共産主義者や活動家を貶めたいのかというくらいに、情けない組織なのだこれが。僕はかつてこれほどまでに下らないテロリストの要求を聞いたことがない。だから悪漢映画にもなれていない。影の薄い主人公と冴えないテロ集団を二時間にわたってみさせれるのだ。実に辛い。
結局最後まで、主人公が組織に潜入する意味が感じられなかった。素直にSASとテロ組織を両面から描くのではダメだったのか。ふつう潜入モノって、最終的にその組織に情が湧いてしまって、裏切るのが難しくなるって展開が定石でしょう。このテロリストら、本当にくだらねーから一切そういう感情がわかないの。だったら最初っから悪者として出してくれよ。いらねーよ一時間も潜入ごっこで丁寧な組織紹介なんて。最初の一時間まるごといらない。
この映画の唯一褒められるところというのが、実際の駐英イラン大使館占拠事件を参考にしたという、クライマックスのSASのアクションだけれど、まぁそれにしたってことさら褒めるような出来ではない。所詮イギリス映画の作る映画というのはこんなものかと思った。007はよくできてたんだな―。
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