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ザ・ホールのEikeのレビュー・感想・評価

ザ・ホール(2009年製作の映画)
3.1
デインとルーカスは母親の仕事の関係でブロンクスから片田舎の街に引っ越してきます。
度重なる転居でデインはブーたれ気味。しかし新居のお隣の美少女ジュリーと知り合うことが出来てようやく生活に張りが出てまいります。
そんなある日、二人の兄弟はこの家の地下室に奇妙な「跳ね上げ戸」を見つけます。
幾つもの鍵が厳重に掛けられたその蓋を開いて見るとそこには不可思議な「穴」が。
ジュリーも加わり、その穴の秘密を探る3人はやがて悪夢の様な災厄に襲われるのですが・・・。

「グレムリン」で知られるジョー・ダンテ監督の新作。
実は本作は2009年製作の3D作品だった様ですが、アメリカではきちんと公開されなかった模様です(イギリスでは公開されたようですが)。
近年ではTVでの活躍も多いダンテ氏ですが、こういう実績のある人が映画界からTVに軸足を移すことが可能なのもアメリカのエンタティメント界の底上げに結びついているような気もしますね。

ダンテ氏の代表作と言えばやはり「グレムリン」でしょうが、他の諸作「ピラニア」「ハウリング」「エクスプローラーズ」「インナー・スペース」や「スモール・ソルジャーズ」と見事なまでにジャンル作品のオンパレード。
しかもスピルバーグ氏とは違い「B級上等!」といった潔さが身上でしょうか。
これらの諸作をリアルタイムで見て来た身からすると「ジョー・ダンテとは商売センスのないスピルバーグである」といった感がありますがそれは本作でも同様。

最初に指摘しておくべきなのは本作はホラーではあるもののあくまで「ジュブナイル・ホラー」とも呼ぶべき作品である点。
レーティングもPG−13と比較的若い観客層をターゲットにしております。
つまり過激な流血シーンなどは一切出てこないという事です。
従って刺激を求めるホラーファンにとっては物足りない作品という事になるのかもしれません。
アメリカで言えばGoosebumpsの様な低年齢層向けのホラー小説と同様の味わいと言えば分かり易いでしょうか。
でもね、「恐怖」だって自然な精神反応である訳で子供たちにとっても重要な感情経験だと思うんですよ。
だから一概に「教育上よろしくない」なんて言って恐怖を避けないでもらいたいなぁ。

「グレムリン」や「エルム街の悪夢」そして「ポルターガイスト」といった諸作との共通項を見出すことも容易な内容ですが出来は決して悪くありません。
その上でダンテ氏の諸作を改めて眺めて見ると「子供心」がキーポイントになっている作品が多いことに気付きます。
ですから本作の内容は正にダンテ氏向きともいえる内容な訳で、子供の視点から見た「怪異」や「恐怖」がうまく捉えられていて、健全な恐怖を楽しめる作品になっております。
地下室の穴はそのまま「異世界」の入口となっており、その中から這い出してきた「怪異」が主人公たちを襲う物語は正に「王道」の展開。

しかもその恐怖の対象は各人の心象を投影して変化するというアイデアが盛り込まれていて子供たちの恐怖心がストレートに映像化されていて意外とすんなり受け入れられてしまいます。
グレムリンの様なギミックに満ちた作品ではない分パンチ力の不足は否めませんが、それでもちゃんとした「物語」になっている辺りはさすがです。
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