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突撃のSのレビュー・感想・評価

突撃(1957年製作の映画)
3.8
原作は、ハンフリー・コッブが1935年に発表した反戦小説※『栄光への小径』

※第一次世界大戦下のフランス軍で実際にあった恥ずべき事件をもとにし、第二次世界大戦が間近に迫っていたことから、当時のスタジオが製作に及び腰だったといういわく付きの原作。その原作を、キューブリック、ジム・トンプソン、コールダー・ウィリンガムが脚色し、強烈な映画にした。

戦後になったにも関わらず製作に踏み切らないスタジオに見切りをつけ、キューブリック自ら俳優のカーク・ダグラスに企画を持ちかけることで映画化を実現させた。

二人の冷酷で無能な将軍(アドルフ・マンジュー、ジョージ・マグレディ)が指揮下の連隊に、ドイツ軍の陣地に自殺行為とも言える猛攻撃をかけるよう命令する。
その結果、事実上絶滅させられ、生き残った兵士がやっとのことで帰ってくると、臆病な行為をしたと責められる。そして適当に選ばれた3人の歩兵が軍法会議にかけられる。連隊長のダックス少佐(カーク・ダグラス)が弁護に立つが、政治的な駆け引きから無実の3人は壁の前に立たされて、銃殺される。残酷で知的で演技も素晴らしい、戦争映画のお手本。
もう一つのクライマックスで、処刑が終わったあと部屋いっぱいに詰めかけてやじっている兵士たちが、捕えられたドイツ人の少女(スザンヌ・クリスチャン、のちにキューブリックと結婚してクリスティターヌ・キューブリックとなる)に余興に歌えと強要する。怯えながらも涙を流しながら真剣に歌う物悲しい歌声に、兵士たちは感動して静まる。キューブリックの映画でもっとも感傷的な場面。

塹壕のシーンは縦移動、突撃するシーンは横移動と、緻密に設計されたドリーショットが非常に効果的。冷笑主義者キューブリックには珍しく、ダックス少佐が軍法会議で「彼らへの告訴は人類への欺きです」と訴えるシーンは、胸が熱くなる。
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