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モーチュアリーのSexyBeastTanakaのレビュー・感想・評価

モーチュアリー(1983年製作の映画)
3.0
80年代前半と後半では、明らかにスラッシャー映画の雰囲気が違ってくる。前半は70年代の陰鬱さを引き継ぎながらもどこか牧歌的な雰囲気が宿っており、後半に行ってしまうとその牧歌性がただのおふざけに堕してしまい、個人的には楽しめない。

1983年製作の「モーチュアリー」は前半の陰鬱かつ牧歌的という時代精神を忠実に反映した作品だ。別に今作は何が優れている訳ではない。脚本もまあまあ、驚かせ描写はほどほど、ゴア表現は微妙。むしろ出来の悪い部類に入るかもしれない。そんな中でキャリア初期のビル・パクストンの存在感は際立つ、とも言い難い。いけすかない医学生役で、最後もなかなかな活躍を見せてくれるが、それで今作のクオリティが改善される訳ではない。

だがこの映画を観ていると、何か心が安らぐのを感じる。まるで炬燵に入りながら暖かなお茶を啜るような、そんな安心感があるのだ。正直予想の域を全く出ることのない、ホラー好きにとっては親しみ深いだろう拙い雰囲気は、もう1つ比喩を使うならば生温いお湯のようでもある。ここに身体を委ねていると、すこぶる心地がいい。様々な映画を経た後に、ふとここに帰ってきたくなる。
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