YasujiOshiba

地球最後の男のYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

地球最後の男(1964年製作の映画)
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アマプラ。面白かった。

ここから生まれたあれやこれやの作品が思い浮かぶ。でもヴィンセント・プライスの顔が一番かも。あの顔だからこそ、伝説の男・ロバート・モーガンがばっちりハマる。チャールトン・ヘストンも、ウィル・スミスもそれなりに悪くはなかったけど、ラストの教会のシーンはあの顔じゃなきゃね。

オープニングの団地がパゾリーニみたいだなと思ったら、なんのことはない。ローマで撮影されてたのね。なんだかエウルみたいだと思ったら、やっぱりエウルだったみたい。やっぱりエウルの近未来感はいいね。なんてったって、ムッソリーニが1942年に開催予定だったローマ万国博覧会(Esposizione Universale di Roma)の会場として建てさせたからエウル(E.U.R.)なんだよね。でも万博は、第二次世界大戦勃発により中止になってしまう。中止になった万博会場跡って、いやほんと、じつに映画的だよな。

撮影のフランコ・デッリ・コッリ(1929 – 2004)は、トニーノ・デッリ・コッリ(1923– 2005)のいとこ。トニーノといえばパゾリーニ映画だけど、ほかにもレオーネやフェリーニなんかの作品を撮った名撮影監督。そのトニーノのもとで、フランコは修行したという。

モーガン/プライスの妻ヴァージニアを演じたのはエンマ・ダニエーリ(1936 –1998)。イタリアではテレビの司会なんかもやって有名な人。きれいな人だけど誰だろうなと思って見入ってしまった。そのダニエーリが蘇ってくるシーンのメークがよい。やっぱり美女がゾンビ化するのは映画の醍醐味。

黙示録世界でモーガンが出会う女性ルースを演じたのもイタリア人女優のフランカ・ベットーヤ(1936- ) 。 ピエトロ・ジェルミの『わらの男』(1957)とかで知られた女優さん。ミニスカートにブーツで登場するのだけど、ちょっとロミー・シュナイダー風というか、カレン・ブラック風というか、悪くない。

それにしてもだ。コヴィッド19のパンデミックのさなかに見るこの映画のリアリティ。この映画ではウイルスではなくて細菌なんだけど、抗体ができれば助かるのは同じ。主人公だけが抗体を持つことになったのは、かつてコウモリに噛まれたことがあるというわけ。

いっぽう最近に感染しながらも、なんとか薬で病状を抑える人々もいるわけだけど、彼らは半分ヴァンパイア化しているから感染しているから昼間には行動できないという設定。薬を打つとなんとか昼間も歩けるので、ルース/ベットーヤはモーガン/プライスに近くわけなんだな。面白い設定。

ラストは、新たなに生き残った人々が黒シャツを着て、夜に生きるまさにヴァンパイア族となったというオチなんだろうな。血清を打たれたモーガンだけは違うんだけどね。ちなみに、小説では血清の場面はなくて、ヴァンパイア細菌に感染しても、生き延びる集団が生まれる。映画はその辺が少し違う。

いずれにせよモーガンは最後の男となり、伝説として死んでゆき、残されたのはポストヒューマン。人類は生き残れなかったし、生き残れたのかもしれない。そんなエンディングが、その後、ゾンビ映画の扉を開けることになる。
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