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愛は死より冷酷のつのつののレビュー・感想・評価

愛は死より冷酷(1969年製作の映画)
5.0
再鑑賞
スーパーマーケットや野原で俳優が「自然」に演技している場面は、確かに「neu」で軽やかな空気が流れるが、そのどちらも後の破滅的展開の前振りに過ぎない。
いくら暴力的で排他的だったとしても、ファスビンダーの映画における関係性は、他者の眼差しを要請していて、だから2人だけの「親密」な関係性が築かれようとするとあっという間に崩壊する。
銀行強盗の場面の緊張感に再鑑賞して驚いた。











「『サイコ』に出てくる警察官が持ってるようなサングラスを探してるんだけど」。
「映画とは運動である」なんてテーゼを格好つけて引いてみると、この映画はあまり運動神経が良い映画ではない。
アンチテアターの劇団員を引き連れて(主演俳優はどれも劇団出身ではないらしい)撮影しただけあってか、前半は特に白飛びするほど明るい壁面に人間が突っ立って喋るか、お世辞にも格好良いとはいえないアクションを展開するのみ。
白黒画面で、若い男女が刹那的な人生を歩み、警察を射殺して破滅するという主題は、いかにもヌーヴェル・ヴァーグである。しかし、『勝手にしやがれ』から3年後にオーバーハウゼン宣言が発表され、さらに7年後にファスビンダーらがデビューすることで、ようやく「ニュージャーマンシネマ」が位置付けられるという、ドイツ映画の「出遅れ」具合は、本作『愛は死より冷たい』における、ヌーヴェル・ヴァーグの軽やかな編集テンポとは似ても似つかない「不器用さ」にも現れている気がする。
とはいえ、ファスビンダーは、『小カオス』などを見ればわかるように、決してそうした運動神経を持っていないのではなく、意図的に捨てて本作を作っている。
実際、ミュンヘンの夜の街並みを横移動で見せたり、スーパーマーケットを歩く二人を手持ちカメラで延々と追う、郊外の街をひたすら歩く3人のショットなどで、思い出したかのように軽やかな運動が回復される。あるいは、ひたすら平面的に3人を並べているかと思いきや、急に表情のクローズアップをつなぐ編集など。
ハントケが言うところの「ストーリーと出来事の違い」。
警察署でガラスばりの壁の前後をうろうろする警察の動きなど、「境界」のイメージもここの時点である。
タイトルにある「愛」は、フランツからヨーゼフへの、ヨーゼフからヨアンナへの、報われぬ愛を指しているのか。
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