佐藤寿保作品に出てきそうな変態フィリップ・シーモア・ホフマンによる演技は三池崇史ばりの精子の使い方もあって最初気持ち悪かったが(褒め言葉)、いつしか話が進むにつれて常識人らしく振る舞っていた他の登場人物の多様かつ異様な性癖が濃厚に画面を覆っていくうちにあいつはまだ共感できるしマトモだったなと思えてくるのが不思議。
老若男女における性の問題を様々な人物のエピソードを通して掘り下げていくブラックな毒を含んだ語り口は他のレビューでも書かれていたようにPTAやアルトマンみたいで結構引き付けられたし、家族の日常のドラマから徐々に問題が発生していき様々な出来事を経て新しい性の目覚めへとたどり着くラストはそういう年齢だからという共感より彼の顔から新たな問題を予想させて顔がひきつってくる。そんな作品で「あなたはハッピー?」と問われても呆然とするしかないじゃないか。
それにしてもあの平凡そうなパパが起こすエグすぎるエピソードが強烈すぎて未だに衝撃が…、『逆噴射家族』の小林克也や『ビジターQ』の遠藤憲一の苦悩が膨れ上がり暴走して行き着いたような地獄。