「エクソシスト」や「オーメン」、「キャリー」などオカルト映画と呼ばれたハリウッド作品が国内でも大ヒットし、日本でもオカルト映画を東映が作らせようとしたのが本作。
犬を首だけ残して地面に埋め、その首を刀で斬るシーンで本物の犬を斬ったという嘘を宣伝目的でついたせいか、あるいは「憑きもの筋」という差別やウラン鉱原を題材としたせいか、長らく映像ソフトが発売禁止になっていた。
「女優霊」や「リング」、TVの心霊再現番組などを祖としたJホラーと呼ばれる前の日本映画は、「四谷怪談」など主に古典的な怪談を題材とした怪談映画は存在した。本作はJホラーが確立する前、ハリウッドのオカルト映画に影響を受けた怪談映画として極めて興味深い。
本作は日本の村落では「憑きもの筋」として差別されていた人たちがいたという問題と、原子爆弾の材料というタブーを取り扱いながら公害問題までも踏み込む。社会派作品かと思わせておいて、「化け猫」のような怪談をベースに、当時大ヒットしたハリウッドのオカルト映画を露骨にパクる。例えば、「エクソシスト」でファンの間ではもっとも怖いとされたリーガンの病院での検査シーンや、「キャリー」のラスト前の夢の中のショックシーンなどがそれに当たる。全体として取り留めのない作品となり、加えて当時の日本映画によくある無駄におっぱいが開帳されること、動物虐待と思えるようなその時代のコンプライアンス軽視を象徴するかのようなシーンも多く、カオスなカルト作品に仕上がっている。
オカルト映画のショックシーンの摸倣は摸倣でしか無く怖さよりも笑いを誘発するが、いくつかの実際の犬を使ったシーンは迫力と不気味さで一見の価値あり。前述した斬首シーンはまっ黒のワンコを実際に首だけ出して砂に埋めており、ほぼ全頭シェパードの大群が走ってくるシーンは圧巻。
あと、憑依された女の子のすね毛がびっしりあったのはちょっと不気味で良い。
怪談映画とJホラーの間を繋ぐミッシングリンク的な作品であり、Jホラーファンであれば必見であろう。