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少林寺武者房のJAmmyWAngのレビュー・感想・評価

少林寺武者房(1984年製作の映画)
4.8
リュー・チャーフィー監督・主演の傑作カンフー映画であると同時に、何と言っても今作に登場する〈武當派〉こそが"Wu-Tang Clan"の名前の由来であるという紛れもない事実だけで下手なラッパーはマイクが喉に突き刺さって死ぬ。

RZAがとりわけその点に目を付けたのかどうかは定かでないけれども、とにかくこの映画自体がとてもHIPHOP的だと私は思うのであります。

ストーリー的な構造としては、大まかに言えば『嵐を呼ぶドラゴン』のように入獄と脱獄を展開し、『少林寺三十六房』のように修行を積み重ね、『南少林寺VS北少林寺』のように陰謀による仕組まれた衝突に巻き込まれるといった具合に、まさにショウブラ作品のサンプリングが今作の基本的な枠組みを形成しているワケです。

また劇中においては更なる本質が呈示されていて、少林派の金剛拳、武當派の八方剣というそれぞれの流派における奥義が一人の権力者によって表層的にサンプリングされようとするのだけれど、そうした元ネタのルーツ(歴史性)に対する理解を欠き、またその排他的な所有性に凝り固まった観念が、それを否定するアンチテーゼとしてのカンフーによって明確に打破されていくという顛末でありまして、その姿勢こそがつまりHIPHOP的な姿勢なのだと私は思うのです。

クライマックスにおいて大変象徴的な台詞がありまして、これはWu-Tangの一員であるRaekwonも自身のソロアルバム"Shaolin vs. Wu-Tang"(今作のタイトルそのまんまw)でサンプリングしているのですが、

"It doesn't belong to anybody, IT EVOLVES!"
拙訳:"それ"は万人のものであって、(そうやって)少しずつ進化していくのでござるよ薫殿!

という台詞でありまして、「そうやって」というのは劇中の文脈で言えば「ルーツに対する理解とリスペクトを保ちながら排他的な所有性を超越して」という事であって、"It"はカンフーの技であり音楽でもあり映画でもあり、最早全てである。

繰り返しになりますがこれをHIPHOP的と言わずして何といおうかと思う次第でありまして、何も友達は悪そうなヤツらだけではなく、リュー・チャーフィーのように頭が丸そうなヤツらだって大体友達だという事実に他ならないワケです。

このように作品それ自体としてHIPHOP性を強固に打ち出す姿勢が見て取れる一方で、今作の劇終は自分が今まで見てきたカンフー映画の中でも群を抜いて凄まじい。それはタランティーノの『デス・プルーフ』に通じるようでもあり、もうなんと言うか、突き抜け過ぎていて凄まじく可愛い。つまりCute Rules Everything Around MeというC.R.E.A.M.においてget the moneyでDolla dolla bill y'allと思う次第でありました。
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