ぶらいとん

娼婦ケティのぶらいとんのレビュー・感想・評価

娼婦ケティ(1976年製作の映画)
4.2
貧しさと人々の欲望ががとてつもなくリアルに描かれていて、あっという間の100分だった。

雨の中震えながら待つ家族、父が金持ちを喜ばせて一家で船に乗せてもらう。アムステルダムでは地下の空き家に入り、初日から洪水で水をバケツでかき出す。見てるだけではわからないはずなのに、鼻につく下水の嫌ーな匂いがするような感覚…画面から嗅覚に訴えるほどのリアリティ表現👏
スープを飲むスプーンの持ち方、パンのかじり方、チョコの食べ方からも貧しさが伺える。

娼婦なんて汚いこと絶対にしない、とクソ変態男に出会うたびに、豚野郎!と唾吐いて仕事を辞めてくるケティの姿とってもカッコいい。お姉さんとは違って、男の言う通りに利用されて、酒に溺れることはない。ケティはずっと冷静だし、かなり賢い人の選び方をしている。寄宿学校の娼婦たちや裸にさせて興奮しているクソジジイを蔑んでいたが、姉も父も仕事を失い、1番嫌っていた娼婦をやるしかなくなる。ホテルに行っても、仕方なく…の態度なので50セントしかもらえない。でも、たまたまであった画家に、セックスではなく絵のモデルになってほしいと言われ、「この人はいい人!」と即座に判断し、次の日も来る約束を取り付ける。

誰でもかれでもセックスしてお金をもらう娼婦ではなく、ちゃんと自分のことを愛してくれる人を見つけるところ本当に賢いな…。金があるなし関係ない、常に人と対等に会話しようとする。(同じ目線を物理的に表現しているのが印象的)だから冗談も言えるし、強気な態度も取れる。またケティの圧倒的美貌が本当に強い武器なんだよな…すごい。あの家族の中では1番知性があった。常に本読んでいたし、影絵で遊ぶシーンからも想像力が豊かな子なんだと思う。

誰もが絶賛している、男性器影絵からのレイプシーンはもちろん、尿フェチおじさん、「無計画に子ども産みすぎなのよ」ってケティにしがみつく母親を蹴り飛ばすところ、チョコだらけの舌で接吻、天井の鏡越しに見える姉の自慰行為、などエログロを通じたリアリティある描き方やっぱ天才です、ヴァーホーベン👏

音楽も非常に好き。ニューシネマパラダイスに似てる音楽だけど、メッセージは全然違う。

冒頭、終わりのテロップでの説明だけ残念。個人的には全て映像で語ってほしかった。