残像

ボイスメールの残像のレビュー・感想・評価

ボイスメール(2009年製作の映画)
3.0
ラリー・コーエンの脚本についてはそのうちしっかり考えたいなー、とか思ってる。こちらはメタな構造を持ったサスペンス。

冒頭の「ありきたりな」アクションドラマは、おそらく実際は「教室で脚本を読んでいる」シーンで、その脚本の内容が、すでに撮影されたかのように具現化されて示されているわけだ。

だとすると、ラストにジョールが留置所でエージェントと話している前までが、彼の書いた脚本(ハリウッドに売れた)の具現化で、現実なのは留置所だけであとは彼の創作。そこでつぶやかれる彼のセリフ「自分の体験を書くんだ」はこの映画においての「彼の体験=現実に起こったこと」とはなんだったのか、をまぜっ返すことになる。

後半、犯人が大体想像ついてからの展開が少々弛緩したように見えるのも、それは売れない脚本家が書いたシナリオだからね、ってこと。クリシェを避けろと教えておきながらクリシェにハマってしまってるのもそう。

そう考えるとラリー・コーエンらしい脚本家による脚本家への批評性のある、というか皮肉たっぷり(自虐的?)の脚本なんである。

だからこのレビューとかでマジメに「この脚本はイマイチ」とか書いちゃってる人たちも、ラリー・コーエンの仕掛けた罠にまんまと引っかかってしまってる可能性があるよね。

あとラリー・コーエンの過去作「ディーモン悪魔の受精卵」あたりとの対称性もあるのでは思ったけど、それについては記憶が定かではないのでまたの機会に。
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