青二歳

NITABOH 仁太坊―津軽三味線始祖外聞の青二歳のネタバレレビュー・内容・結末

3.2

このレビューはネタバレを含みます

学習塾経営者が初アニメ監督に挑戦した異例の作品。どこからアニメーターを集めてどうアニメ制作に踏み切ったのか…しかも第1作目が津軽三味線の始祖仁太坊の一代記。色々ふしぎ。
劇中の三味線音楽は奏者は上妻宏光氏なので、クライマックスはそれだけでも見応えあります。

アニメとして出来がいいかというとちょっと微妙…セルアニメで運指まで合わせようと努めているのはすごいんですが、なんというか…悪くないんだけど“道徳の授業で観させられる系”アニメ…っぽい…この妙な丁寧さが魅力をやや減らしている印象。山場が盛り上がらない…

とりわけ劇中では江戸時代イコール身分社会というアピールが強いんだけど、渡し守はそこまで身分低いとか蔑まされる職業だったのか…?他の国に比べれば江戸時代つて結構ゆるい身分制だと思うんだが。
大体当道座(男性盲人の互助組織)に入れてもらえないってどういう事。お金用意すれば官位くれる組織だし…子供って入れてもらえないのか…
かといってこの身分制度が山場でもないんだよなぁ…

ご維新のあと、特権を失った“坊さま(ぼさま)”の描き方もわざとらしい…独学で三味線の門付けをする仁太へあてつけて、仏のありがたみがあるないとか正道だ邪道だとか絡むのだけど…まぁご維新で立場がなくなったので、門付けで糊口をしのぐようになったのでしょう。ただ実際に本人がそう蔑まされたのかどうか。伝記でも確認しないと判じ兼ねますが…わざとらしいなぁと思う。目あきの“ぼさま”もいましたけど、青森の“ぼさま”は盲人の芸能者を指すのではないのか…?
知識が追いつかない事ばかりでしたが、とはいえ、江戸時代から明治へ移り変わりに応じて、職能集団の変わりゆく姿は興味深かったです。当道座は官金をもらっていたので、倒幕となれば自分たちの身分を保障してくれるものがなくなってしまうので、不安でヒリヒリした空気が伝わってきます。結局明治時代になり盲官は廃止され、否応なくあり様の変化を強いられていく。クライマックスの園遊会で当道座と仁太坊が対バンするのはそうした背景があるのでしょうが、ちょっと自分には説明が足りなくて分からないことも多かったです。

総じて丁寧なんですが、丁寧すぎるも良し悪しで、ストーリーの運びが平坦なのが残念。ただ良い点としては美術のクオリティがえらい高いことです…津軽の風土の美しさに目を見張りました。
あと好感をもてるのが、劇中の文字が美しいこと。ほか人形浄瑠璃でわざわざ“がぶ”を挿入したり…教育者だからですかね。いちいち細かいこときっちり描くんですよね(^_^;)

しかし子連れの瞽女さんって…水上勉の“離れ瞽女”じゃあるまいし…いいのか。そこが一番気になった。
青二歳

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