CHEBUNBUN

家族日誌のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

家族日誌(1962年製作の映画)
4.5
【ツンデレ兄の内なる世界】
男が雑然とした部屋で何かをまだかまだかと待っている。電話が鳴る。男は受話器を取る。弟が死んだようだ。

男はがらんとした町を歩き帰路に着く。そして、壁に掛かった絵から弟との思い出を反芻する。

弟が産まれたせいで母が死んだ。彼はそう睨む。養子に出され、離れ離れになった弟と久しぶりに再開する。彼はロクに勉強せず、不良仲間と卓球をしている。声をかけようかかけまいか悩む男。しかし、弟は彼を認知しており、「アイツがおいらの兄さ!」と突然指を向ける。

こうして再会する二人。弟は勘当されたので自宅に引き取ることとなる。貧しさや家族の閉塞感を兄は引き入れ、自由奔放な弟に蔑視の目を向けつつ不器用な愛を注いでいく。

夏目漱石や太宰治の小説さながら、重厚な人間の内なる心を描いた作品。嫌いの裏返しとしての愛を女々しく回想していくのだが、町並みを映すカメラワークやドラマティックな再会シーンなど撮影のメリハリが素晴らしく、兄の葛藤が刺さりに刺さる作品でした。
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