アイダ・ルピノが階段を登って居室に入るまでを捉えるショットがいいなと思ったら、何度か繰り返された。ビジネスに才長けたジョーン・フォンテインと中華料理屋ウェイトレスのアイダ・ルピノは異なった階層にある。前者に子供ができず後者がすぐに妊娠するのはなかなか酷い展開。二人の内面には深入りせず、その間で優柔不断に振る舞うエドモンド・オブライエンの懊悩が描かれる。プロデューサー兼脚本家が自分の前妻と後妻に二人の妻を演じさせているのは、金のない映画会社なりのパブリシティ作戦でもあったろう。なお、現実ではルピノが前妻、フォンテインが後妻で、その間に切れ目はほとんどない。ルピノも離婚直後に次の夫と結婚してすぐに子供を産んでいる。ルピノの監督作のほとんどはこのプロデューサーとの共同経営会社で製作されていて、それは離婚後も続いた、といった下世話な話に興味は尽きない。