Rily

71フラグメンツのRilyのネタバレレビュー・内容・結末

71フラグメンツ(1994年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

卓球のラリーをする青年の長回し。異常なまでに長く、延々と機械から送り出される球をこちらに向けて打ち返すだけ。青年は少しずつ紅潮し息が上がりながらもひたすら打つ続ける。まるでこちらと必死にコミュニケーションを図ろうとしているかのよう。観客はこの単調で何も起こらない長回しに少しずつストレスを蓄積させていき、そしてここまで引っ張ったのならば何か起こるのでは?という期待も増していく。しかしながら一切何も起こらず次のカットに移ってしまうので拍子抜けしそうになる。

この映画は71個の断片の集合体である。それは全ての事象が断片で成り立っている現実世界のことでもあるらしい。悲劇的なニュースもくだらないゴシップネタも、いくら送り手がわかりやすくまとめたもの(=断片の集合体)で伝えたとしても受け手である我々に伝わるのは結局、省略された「断片」に過ぎない。そもそもハネケ監督というのは説明を排し答えを明示しないうえ、傍観する者を巻き込み、受け身でいる者を挑発しコミュニケーションを図ろうとする。つまりその断片の背後にあるものを観客が構築する他ない。

いくらこの映画がある大学生の日常から銀行襲撃、射殺したのち自殺するまでを描いたとしても、マスメディアは「動機は不明」として伝え、最後に何処に立ち寄った、誰と連絡とったなど、結局受けとる情報が「断片」に過ぎない以上、それらを第三者が繋ぎ合わせて彼をそのような行動に駆り立てた原因を解き明かそうとしても、考えは千差万別であり不完全。しかしながらそこにこそリアリティがある。

全てを解明出来たり理解など出来ない、
そういう前提であるならば、

「じゃあどうする?」

そういう次元のはなし、なのだろう。
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