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ブッチャー・ボーイの一人旅のレビュー・感想・評価

ブッチャー・ボーイ(1997年製作の映画)
4.0
第48回ベルリン国際映画祭銀熊賞。
ニール・ジョーダン監督作。

アイルランドの作家パトリック・マッケイブによる1992年発表の同名小説を同国出身の鬼才ニール・ジョーダンが映画化した青春ブラックコメディです。

1960年代のアイルランドを舞台に、アルコール依存症の父親と精神疾患の母親と暮らしている主人公の少年フランシーの波瀾曲折の生き様を描いた青春コメディの異色作で、60年代アイルランドの世相や米ソ冷戦の緊迫した国際情勢、カトリック信徒が多いアイルランド人の宗教感覚を背景に、不条理な出来事の連続によって次第に精神を疲弊させていく少年の変転の少年時代を順に紐解いていきます。

母親の自殺と父親の病死そして無二の親友からの予期せぬ裏切りという耐え難い現実に晒された悪ガキ少年が完全に闇堕ちするまでを描いたブラック風味のジュブナイル青春劇で、良いことが何一つなく起こるのは悪いことばかり…という荒みに荒んだ少年期を過ごす一人っ子少年のサディスティックな悪の道への進入を少年を取り巻く癖の強い町の人々との関わりを軸に映し出した暗黒青春映画となっています。

アイルランド少年の過激な闇堕ちを英国風味のブラックユーモア満載に見せていく鬼才ニール・ジョーダンの異色作で、主演の新星イーモン・オーウェンズが残酷な現実に呑み込まれていく少年を諦観の表情で妙演しています。
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