「そこで仕事はストップ。出口はあちらです。」冒頭の問答無用の集団解雇シーンが重く突き刺さります。未曾有の金融危機を象徴するシーンから始まった……って思ったら、まだ始まってもいませんでした。
リーマンショック発生の前夜をスリリングに描いたお話。金融の知識なくても巧みな演出と演技で飽きずに最後まで面白く観れました。ケヴィン・スペイシーやザカリー・クイントなどの有名どころもキャスティングされていて地味さを緩和させていますね。ベルリン国際映画祭で最優秀作品賞(金熊賞)を獲得したのだそう。
舞台は大手投資銀行リーマンブラザーズのニューヨーク本社。リスク管理部門の担当者が残業中に今にも爆発しそうなメガトン級のリスクを発見。緊急収集された役員たちが導いた決断は……って話。一般市民と比べたらかなり感覚ズレしたろくでなし集団の話で、ここには同情するべき対象となる人はゼロ、って思いました。
それでも難しい金融話を上手にエンタメに落とし込まれていて、その先見たさにグイグイと引っ張られましたが、苦い味がする余韻を味わう作品でもありました。しくみを熟知する業界人たちが保身に回り、そのツケが一般市民に直撃する不孝話は、行き過ぎた資本主義への警鐘。大なり小なりこの日本でも繰り返されている普遍的な題材なのかもしれませんね。