半兵衛

知りすぎた少女の半兵衛のレビュー・感想・評価

知りすぎた少女(1963年製作の映画)
3.5
『ローマの休日』をサスペンスにしてしまったという冗談のような、でも本編を見たらそれなりに納得してしまう一作。でもヒロインは高貴な身分ではなくローマを訪れた普通の女性(もっともその素性が本編では明確に明かされないのである意味正体不明の人物)で、何より美人ではあるがタイトルに謳っている少女っぽさは妄想癖以外皆無の大人。

イタリアンジャーロの基礎となった作品と言われるだけあり、話を練り込んで作り上げるというよりただ単にヒロインを謎の殺人鬼をはじめとする様々なギミックでひたすら怖がらせて脅かしていくというスタイル。そして怪しいキャラクターが次々と登場してくるが、二時間ドラマみたいに思わせ振りに出てきてはすぐに消えたりして肝心の殺人犯も適当に選んだように何の伏線もなくラストで唐突に明かされる。

でもそんな映画が詰まらないかというとそうではなく、マリオ・バーヴァ監督の映像美学がイタリアの観光名所や普通の街を緊張感と恐怖に満ちたサスペンスらしい街へと変貌させていくのが圧巻で主人公同様ハラハラさせられるし、がらんとした部屋から引っ張っての死体の見せ方がヒッチコック同様上手くてハッとさせられる。

ラストは一見ほのぼのとしているけれど、冒頭での麻薬入り煙草の伏線回収といい「映画なんて所詮夢なんだよ」というはかないメッセージが伝わってきて味わい深い。
半兵衛

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