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中国超人インフラマンのJAmmyWAngのレビュー・感想・評価

中国超人インフラマン(1975年製作の映画)
3.9
日本特撮・アニメのショウブラ的インテグレーションである。

主人公は仮面ライダーのように超人インフラマンへと変貌を遂げ、繰り出す必殺技は思いっ切りスペシウム光線で、そして最終兵器はロケットパンチなのである。また敵も敵で、地底から出現して地球侵略を目論むというその構造はゲッターロボの恐竜帝国だし、ラスボスの女王のデザインはどことなく鋼鉄ジーグのヒミカを彷彿とさせるのである。
ただし本作の公開は1975年という事で、日本において鋼鉄ジーグの放送が開始されたのも同年であるという事実を鑑みると、これについては既存の要素をサンプリングしたものではないのかもしれない。そうすると、この女王のイメージについては「意味のある偶然の一致」が、つまり魂の共時性が発生していたのかもしれない。サンプリングの集積の果てに巻き起こるシンクロニシティ。なんと感動的な事だろうか!

本作はショウブラ作品でダニー・リー主演だからといって、インフラマンの殺陣はあまり洗練されていないと思う。カンフーだけで見れば、多分生身のチェン・カンタイやティ・ロンの方が強い。しかしながら、それでもやはりこの作品には、愛すべき部分が存在するのである。

序盤で主人公がインフラマンに改造されるワケなんだけど、実はこの点においては、仮面ライダーとの大きな差異がある。ショッカーに無理矢理改造されてしまった仮面ライダーに対して、本作の主人公は自ら望んで仲間の博士によって改造される。また本郷猛は様々な人体改造を受けた一方で、本作では手術台に拘束こそされるものの、その改造工程は注射一本で終了である。
ただ、ここからが素晴らしいのだけれど、注射による何らかの液体を投与後、経過を気にする博士が一生懸命モニタリングしているのは、CMY(シアン・マゼンダ・イエロー)の値を示すアナログインジケーターなのである。つまり、この博士が気にしているのは、他でもない「色」なのである!恐らくは「インフラマンがデザイン通りの色になりますように」と!!こんなにピュアで歪んだ創造を目の当たりにして、僕は「素晴らしい」以外の言葉を持ち得ないのであります。

またバック転を繰り返すのはいいんだけど、編集がアレなので明らかに空中でもバック転してしまっていたり、あるいは変身シーンにおいて空を飛翔するカットはどうしても切り離せないらしく、敵がすぐ目の前にいるのに変身して勢い良くどこかへ飛んで行ってしまう(そして何事もなかったかのように一瞬にして戻ってきている)のも、僕はもう好きでしかないのです。
これらのような無邪気さによる論理の飛躍は、僕を実利性の余剰へと(一瞬)到達させてくれるのです。それは、バタイユ風に言えば「有用性の限界」というヤツ、合理性や社会的にシステマチックな領域を逸脱して、過剰に発散されるエネルギーなのであります。

インフラマンや博士たちは、そうしたエネルギーの輝きをこそ、我々人類に見せてくれたのです。僕はこういう人達に本当に感謝しています。謝謝、中国超人!
ところで、インフラマンがあと5000回くらい進化を繰り返せば、きっと彼自身がこのような有用性の限界を超えたエネルギーの結晶になれるのではないかと、すなわち「過剰発散の銀河・ジミー・ウォング究極大先生」になれるのではないかと、僕はそんな事を思いました。加油、中国超人!
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