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マンクスマンのYOSUKEのレビュー・感想・評価

マンクスマン(1929年製作の映画)
3.1
故アルフレッド・ヒッチコック監督のイギリス時代の映画。 
公開年を見ていただければ分かるように、非常に古いです。 
白黒&サイレント映画です。 
カメラワークもありませんし、映像の合間に台詞を入れるので台詞数も内容が分かる程度の必要最低限で、ほぼBGMと役者の表情で心境を理解していくしかありません。 
しかし時代が時代、技術が技術とはいえ、決してつまらないものではありません。 
確かに内容も昼ドラレベルぐらいだったりするのですが、1920年代後半の世界・人々・建物などを観ることができるし、当時の役者の台詞なし口パクの演技も現代映画ではなかなか観られない代物。 
特にカメラは移動もズームもできないので、相手が怒りの表情を出すときなんかは、まず全体像をフェードアウトしつつ顔のアップを次に持ってくるという手法を使い、そのシーンを強調しているんですね。 

特に特筆すべきことは、やはり役者さんたちの表情なんですね。 
声を録音することができないのでやや大げさに感情を表しているのですが、これが見事に3人の暗い表情が違うんですねぇ。 
最後のシーンで3人とも打ちひしがれた表情があるんですが、3人とも想っている事が違う。それがよく現れていて、音声なしでも読み取ることができました。
すごいですねぇ。 
素晴らしいですねぇ。 
見方を変えれば白黒&サイレントでも十分に楽しめる。 
そんなことを思わせてくれた作品ですね。 

どろどろで、どうしようもない恋愛映画でしたが、3人の登場人物の気持ちが分かりました。 
1920年代後半でも、ふとした事で恋愛と友情が悪い方向に傾くんですね。 
いつの時代でも、恋愛に変革は訪れない。 
そういうことでしょうか。 
それにしてもヒッチコック。 
この時代にこの三角ぐだぐだ関係はタブーに近いはず。 
そんな表に出せない出来事を映像化して観客に未知の世界を与える。 
当時の人には割かし衝撃的な内容だったんじゃないでしょうか。 

ツタヤのでかい店舗なら、ひょっとしたらレンタルできるかもしれません。 
そこまでオススメはしませんが、近頃の映画は原作を基にした作品ばっかで新鮮味がない!って方は、新しい映画の世界をのぞき観てはいかがでしょう
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