垂直落下式サミング

BE-BOP HIGHSCHOOL ビー・バップ・ハイスクールの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

3.8
天保工業の不良集団が、愛徳高校周辺への侵攻を開始し、捕らえられたヒロシが重傷を負う。トオルは立花商業や北高をはじめとする近隣校との同盟「JBグループ」を結成し、天保工業に戦いを挑むが…。原作者きうちかずひろ先生を監督・脚本とし、主要人物のキャストを一新した平成ビーバップ。
旧劇場版シリーズのファンからの評価は芳しくない様子だったので、どうしたのだろうと思ったら、なるほどこれは「思てたのと違う」案件で納得。
公開が1994年ですから、もう「今日も元気にドカンをきめたらヨーラン背負ってリーゼント」みたいなのを、そのまんまやるわけにもいかなかったと思うんですけどね…。
にしても、有名な那須監督版とは、雰囲気や方向性がまるっきり違う。なかよしこよしの牧歌的だった不良の世界は、ドライでシャープな血の世界へ…。
やっぱ、不良という生き物の愚かしさや情けなさに可愛げを持たせず、単なる乱暴者の面にしっかりと向き合っているのが、いちばん大きい変更点だと思う。
インベーダー天保工業へ対抗しようと作った愚連隊は、近隣高校が手を取り合った連合軍と言えば聞こえはいいけれど、しょせん烏合の寄せ集めだから、瞬く間にギャング化してしまう。アウトロー界隈あるあるのリアリズム。バカが寄り集まって作ったモノは、すぐに当初の大義は消え失せて、ガラ悪チームとしての属性だけを引き継ぐ。よく聞く話ではある。
さらに、その代表の地位についたトオルがめちゃくちゃチョーシにのって取り巻きを作ってイキり散らしてしまうのや、立花商業の菊永が立ち回りやハッタリの利かせかたが上手いだけの超情けないヤツとして描かれているなど、人気キャラたちの性格が、しっかりとシャバくなっている。
タイマンだガチンコだと硬派なのはヒロシくらいで、往年の筋のとおったツッパリが不在のままストーリーが進んでいく。牧歌的な与太郎リマスターを期待していたであろうファンにとってはムゴい仕打ち。
ツッパリという幻想に夢をみていたのに、原作者が出張ってきて、そんなもん嘘っぱちだと梯子をはずされたら、複雑な気持ちにもなりますわよ。
だけれど、実際問題として立場を得たチンピラはどんどん横柄になっていくものだし、暴力の怖さを知っているものほどガチでヤバイやつには逆らわないものだ。リアリティに重きをおいた作品なのだと思う。
ケンカのシーンは、撮影がバタ臭くてちょっとナシかなぁ。予算が潤沢ではないのか、アクションに華がない。昭和にはあった熱がなくなっていて、純粋なパワーダウンが残念。BGMが一種類を使い回しで被さるのも、単調でつまんない。
序盤、天保たちが徒党を組んで襲ってきて、地元のヤンキーがリンチにあってしまうところなど、陰湿な暴力の表現みたいなのは、映像の繋がりが作り込まれていて、わりに好き。ツッパリ対戦というよりは、カラーギャング抗争のような趣で、新しさはあった。
獲物を狩る灰色学ラン。極悪ガチャピン。観てほしいのは、爪切りの使い方。ぎょええー!いたーい!