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長く熱い週末のTLsのレビュー・感想・評価

長く熱い週末(1980年製作の映画)
4.0
カルト的人気を誇るイギリスのギャング映画。正直序盤はあらゆる情報が断片的にちりばめられていたので少し本筋を追うのに必死になりあまり映画を楽しめなかった。しかし、相関関係がすべて劇中で説明されるので終盤は作品にののめり込むことができた。

自分が特に素晴らしいと感じたのは物語である。頂点に上り詰めた男が転落する様を描いている。他の似たようなプロットと決定的に違う点は最後まで敵の正体がわからない点である。通常、このようなギャング映画は利害関係をはっきり示したほうが面白いと思うのだが、この作品はそれを最後まで示さずサスペンス映画のような語り口で物語を進める。このおかげでギャング映画のクリシェにハラハラドキドキを感じることができた。ボブ・ホスキンスの演技が、グレネードランチャーを使わず、この映画にスカーフェイスのような破滅のカタルシスを付け加えている。彼の演技がこの映画が頂点を夢見て駆け上がった男の破滅を上品に描けている理由であり、この映画が他の同ジャンルと一線を画す物だということがわかる。

個人的に衣装もかなり気に入っている。勿論ゴールドチェーンを付けているのだが、スーツの色は皆ビジネスマンのような黒やグレーを基調としている。個人的にはギャングというともう少し派手な色を使うと思うのだがビジネスマンライクなスーツの着こなしはこの映画が上品にピカレスクロマンを描いていることの一助のなっているのは違いない。ゴッドファーザーより、この映画のような着こなしが案外現代のビジネスマンが参考にすべきものなのかもしれない。
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