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グレート・ミュージアム ハプスブルク家からの招待状のzunzunのレビュー・感想・評価

3.4
床を叩き割り改装を開始する冒頭のシーンが鮮烈。業者のざっくばらんな服装は、豪華な装飾や天井画には似つかわしくなく、奇妙な風景。
スタッフが寄贈品を丁寧に扱うのに比べ、寄贈者はその辺にある物を取り扱うように乱雑で苦笑してしまう。でもそれらは美術館の中ではごく普通の光景なのかもしれない。

本作の見所は、その分野ではスペシャリストのスタッフ陣による美術館の日常。
展示品の配置に悩むスタッフとその指示に従い名画を左右に持ち運ぶ業者たち。
オークションのシーンでは、お目当の物が高額に跳ね上がり、残念そうに購入を諦めるスタッフの姿が印象的。
修復士にる作品の修復シーンは毎度のことのように観ていて感心する。

文化の繁栄と成熟には経済的繁栄が必要と言われるが、歴史のあるウィーン美術史美術館と言えどもビジネスの面での成功は必要。予算の駆け引きや今後の運営方針を巡っての議論は白熱で見もの。総館長を始め女性陣が多く、颯爽と仕事をこなす姿はなかなかのもの。

鑑賞後、トークショーが始まり、作品を観ただけでは分からないことが聴け、解説込みで楽しめた。
「世界屈指の美術館と言えども、僅か数人で運営方針を議論し決定する。少数精鋭のスタッフ陣、お金のやり繰りなどは、まるで中小企業のよう」と言った趣旨の話が興味深かった。
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