テクニカラーのマッチョ

ジャングル・ブックのテクニカラーのマッチョのレビュー・感想・評価

ジャングル・ブック(1942年製作の映画)
4.5
コルダ三兄弟が戦火のイギリスを離れアメリカで製作したインド冒険映画。原作はラドヤード・キプリング「ジャングル・ブック」の一部。コルダは既に同原作から「カラナグ」を製作しているが、ディズニーであれ「ジャングル・ブック少年モーグリ」(日本アニメーション)であれ、ジェイソン・スコット・リー主演版であれジャングル・ブックといえばモーグリの物語となったのは本作の影響だろう。もっもとジャングル・ブックの6割位はモーグリの物語らしいが。
ジャングルの様子は幻想的。水面に映る鹿たち。虎も狼も黒豹もかわいい。どうやって撮影したんだろう。夜のジャングルを駆けていくモーグリと少女。ジャングルに埋もれた遺跡はマット画とセット。その作り物感がファンタジーっぽくて良い。ジャングルファンタジー。リアルに泳いで口を開けるワニは本物のはずがないがなかなか迫力。いかにも作り物のヘビ2匹のうちカーがモーグリと蛇行して泳ぐ様子は爽快。素晴らしい。
子供を失った母(たぶんモーグリの生みの親)の愛、少女とモーグリの交流、モーグリを敵視する男の欲深さ。強欲が身を滅ぼす中盤は多少失速するが興味深くはある。人間とジャングルの対立。ジャングルを追われ、人間社会からも追われ行き着く先は炎の中と語るモーグリの決断が胸に迫る。
メインキャラのうち熊のバルーは最初に紹介された後は出てこず(従兄弟の毛皮は出てくるけど)、黒豹のバギーラと大蛇カーは活躍。テクニカラーに最も映える動物は虎と思っているのでシアカーンにはもう少し活躍して欲しかった。
主演はインド出身のスターであるサブー。当たり役。ジャングル育ちの野生と純真を体現している。
製作がアレキサンダー、監督がゾルタン、美術がヴィンセントのコルダ三兄弟。

本国でもパブリックドメインのため出回ってるものは画質が劣化してるものが大半と思う。けれどもはや画質に関係ない面白さだ。とはいえきれいな画質で見てみたいと思ったら、youtubeにあるドイツ語吹替版がとてもきれいな画質。こんなに美しいテクニカラーだったのか。