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フレンチ・コネクションのSのレビュー・感想・評価

フレンチ・コネクション(1971年製作の映画)
3.7
①2021/10/09 DVD【特別編】
②2021/10/10

1961年に発生した、ニューヨーク市警麻薬課の刑事二人組が、フランスから密輸された麻薬約40キログラムを押収した実在の事件がモデルとなっている。
タイトルの「フレンチコネクション」とはトルコからフランスを経由して米国に輸出されていたヘロインの密売ルートおよびその組織のこと。

フランスのマルセイユで見張りの刑事が殺し屋に殺され、この殺し屋が、優雅なフランス紳士シャルニエと繋がりのある事がわかり、更にこの殺し屋はテレビ・タレントを抱きこんで、高級車リンカーン・コンチネンタルに大量のヘロインを隠してニューヨークに持ち込む。
一方で、ニューヨークのダウンタウンではサンタクロースとホットドッグ売りに化けた二人組の刑事ドイルとラソーが麻薬の売人を追い詰めるという、マルセイユとニューヨークの話が、一見何の脈絡もなしに交互に展開していく導入部から引き込まれる。

ジーン・ハックマン演じるポパイこと、ジミー・ドイルの刑事像は、しょぼくれかかった中年男で、ポーク・ハイ・ハットを被り、何処となく下卑た感じで、好色で人種差別意識も持つ。刑事がヒーローからアンチ・ヒーローへ転化した最も典型的な例で、86箇所に登ったと言われるニューヨークでのロケも極めて効果的である。
撮影秘話によると、ハックマンがドイルの人物像を掴みきれないままにクランク・インし、差し入れのドーナツを口にして残りを道端に捨てた仕草を観たフリードキンは、すぐさま「それだ!」と指摘したことで固まったキャラクターだそうだ。

中盤以降に、ドイルがシャルニエを尾行するシーンから面白くなり、モダンジャズのような荒々しいピアノの音楽も印象的。列車高架下の道路をハイスピードで追いかけるカーチェイスの場面は、本作では最もスリリングである。
このシーンでは、ロケだとは予告せず通常通りに生活している状況で車を走らせたこと、また危険なシーンはスタントによる俳優の決死の運転だが、助手席に自ら乗り込んで撮影したフリードキン監督の尋常ではない、リアリズムへの拘りが解る。

尾行しているドイルを余裕で交わしていくシャルニエこと名優フェルナンド・レイは、いつものブニュエル映画のブルジョワジーそのままに、優雅で謎に満ちた存在感で魅了する。
高級レストランでリッチなコース料理で食事を楽しむシャルニエと殺し屋ニコリを、通りの向かい側から見張るドイルとラソーが、寒い街頭で、薄いピザを紙コップのコーヒーで流し込む名場面がお見事。

また、1970年代以降のニューヨークが舞台の映画で気になるポイントでもある、エンパイア・ステート・ビルの後方に佇む、巨大なクレーンが見え隠れしている建築中のワールド・トレード・センターのツインビルを背景に、後にポパイが目をつけるシャルニエとニコリが悪巧みをする様も名場面である。


2021-297
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