冷蔵庫とプリンター

金曜日のテレーザの冷蔵庫とプリンターのレビュー・感想・評価

金曜日のテレーザ(1941年製作の映画)
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 イタリア映画3大巨匠の一人(4大巨匠と言ったりもするらしいが、巨匠に変わりはない)ヴィットリオ・デ・シーカの傑作ロマンティックコメディ。
 『くつみがき』『自転車泥棒』『ウンベルトD』などのネオレアリズモ期の作品が有名だが、それ以前に作られた本作も素晴らしい。上記の作品群と共通するデシーカの魅力は、やはり卓越したストーリーテリングにある。
 遊び人で借金まみれの小児科医が孤児院の担当医を受け持つことになり、色々なトラブルに巻き込まれていくという同時期の古典的ハリウッド映画のような喜劇で、孤児院の少女が戯曲の引用を駆使して医者の窮地を救うところなどは非常によくできている。自分の父親は偉大な俳優だったと夢想するテレーザ・ヴェネルディ、"金曜日"という姓を与えられた孤児という設定が後半にはほとんど忘れ去られてしまうところは少し気になる。
 デシーカ本人が主演を務めており、俳優としても一流であることを証明している。テレーザ役のアドリアーナ・ベネッティや気怠げな歌とダンスを披露するアンナ・マニャーニも素晴らしい。
 この時期のイタリア映画は90分ほどの尺でもインターミッションが入るのが興味深い。当時のイタリアの上映形態や観客に想いを馳せるのも一興。