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サルトルとボーヴォワール 哲学と愛のodyssのレビュー・感想・評価

2.0
【表層的な映画】

1960年代から70年代にかけて一世を風靡した、そして日本のインテリたちのお手本のような存在だったサルトルとボーヴォワールを、ボーヴォワールの視点から描いた映画です。

ただし映画だけあってと言うべきか、彼らの思想の内実に鋭く切り込むような作りではありません。彼らの体験の表層をなでるようにして話は進んでいきますので、どちらかというと風俗描写をメインにすえたかのような印象が残ります。

二人以外にもモーリヤックやポール・ニザンやカミュなど、あの時代を代表するフランスの文筆家が登場しますが、やはり表層的な描写に終わっています。

後半、アメリカに行ってあちらに恋人ができるところはちょっと面白いけど、それも私がボーヴォワールのことをあまり知らないからでしょう。ここのところでアメリカ人の男とフランス人の男の違い、みたいなものが突き詰められていればもっと面白い映画になったと思うんですが。

結局、インテリらしくもっともらしい理屈をつけているけど、要するに男と女は色々な異性とヤりたいものなのだという、きわめて単純な真実が見えるだけの映画に終わったのではないか――これが私の感想です。
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