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気のいい女たち(1960年製作の映画)
3.8
 フランス・パリ、夜の歓楽街、BOYが立つストリップ小屋の前で、口髭の男(マリオ・ダヴィッド)が女たちの退店の瞬間を遠くから待ち伏せしている。恋人で兵士のアンドレ(クロード・ベリ)の熱烈な歓迎を受けるジャーヌ(ベルナデッド・ラフォン)の姿。ジネット(ステファーヌ・オードラン)とリタ(リュシル・サン=シモン)を送ったあと、ジャーヌとジャクリーヌ(クロチルド・ジョアノー)の2人はパリの石畳の上を徒歩で帰り始める。すると1台の車が彼女たち2人のあとを執拗に付け狙うようにゆっくりと走る。中年男のマルセル(ジャン=ルイ・モリ)とアルベール(アルベール・ディナン)は彼女たちにしつこく話しかけ、家まで送ると告げて彼女たちを後部座席に乗せる。その後、贅沢な料理と酒でジャーヌをその気にさせた男たちは彼女をお持ち帰りするが、ジャクリーヌは途中で帰る。翌朝の朝7時、昼間の仕事に初出勤する2人の女はメトロへ向かう階段を駆け足で降りて行く。ベラン氏(ピエール・ベルタン)の経営する電化製品店で働き出した女性4人、レジに立つのは中年のルイーズ夫人(アヴェ・ニンケ)だった。

 『いとこ同志』のシャルルとポールのように、性に奔放なジャーヌと、白馬の王子様を夢見るジャクリーヌとはコインの裏表のように対照的なキャラクターである。リタは婚約者のアンリ(サシャ・ブリケ)と近々結婚予定だが、その理想と現実に打ちのめされる。9時から7時までいつも家電量販店の店番をする女たちは、みんな男に甘く騙されやすい。そんな彼女たちの隙を男たちは独特の嗅覚で攻め立てる。恋を夢見る女とドリー・ベルの登場、詩人が聴いた『サン・ピエールのソネット』と6人を殺したヴァイドマンの焦燥。ミゲル・サントスの歌声を聴いた年頃の女たちはそれぞれ理想の恋に想いを馳せる。再び現れたマルセルとアルベールの暴挙、何度もプールの底に沈めかけられたジャクリーヌをラスト・ミニッツ・レスキューする男の姿。だが誰も予期しなかった陰惨な結末は、のちに『女鹿』や『肉屋』などでも垣間見えたクロード・シャブロルの後味の悪さの原点となる。若い美女(カレン・べドス)が最後に見せたカメラ目線、その微笑みの先には女たちの安住の地はない。ヌーヴェルヴァーグの時代に黙殺された今作は、女たちの焦燥を描き出し、明らかに時代を先取りしていた。その先見の明にようやく時代が追いついた1本に他ならない。
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