蛸

ワイルド・アット・ハートの蛸のレビュー・感想・評価

ワイルド・アット・ハート(1990年製作の映画)
4.2
イカレた男女の逃避行を描いた映画というと『俺たちに明日はない』から『ナチュラルボーンキラーズ』や『トゥルー・ロマンス』が想起されます。それでもやっぱりこの映画は一々演出が異常すぎて面白すぎます。
頻繁に繰り返される炎のイメージが回想の過去と現在をつなぐ役割を担っていたり、単純に二人の燃え盛る愛を表現しているのだろうと言ったレベルでも面白いのですが、リンチの考える裏社会の描写とか、異常者しか出てこない展開であるとか、『オズの魔法使い』を踏襲した演出とか、挙げるとキリがないくらいに変なところがいっぱいです。
普通の人間なら絶対に行わないような演出を平気でぶち込んでくるところがリンチらしさで、そのあっけらかんとした演出は紙一重で笑いにつながるところがあると思います。他のリンチ映画ではこの彼特有の演出は不気味さを醸し出すことに役立っているように思えます。その意味でこの映画はリンチの作品の中でも最も笑いに近づいた映画なのではないでしょうか。
ざっくり言うと、物理的な移動は問題を解決しないけれど、物事の見方を変えることが問題を解決する、というようなお話だと思いました。リンチが純愛を描くとこうなる、という意味でやっぱすげー監督ですね。
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