そんなカルディナーレに、『殺しのギャンブル(Camorra)』(1972)をヒットさせたナポリの監督のこの映画の企画が持ち込まれる。公開は1974年。翌年の1975年にCCはクリスタルディとヴィデス社による公私にわたる拘束から自由になって、NYのナポリ人のもとに飛ぶ。「人生で唯一愛した男」(l’unico uomo della mia vita)のもとへ。
さてこの映画に出てくるもうひとりのグワッポが、ナポリの治安長官アイオッサ(レイモン・ペルグラン)。「治安長官」と訳しておいたけれど、イタリア語は「delegato di pubblica sicurezza」で中央政府から治安を守る職務を委託された代理人のこと。実はアイオッサもまた、もとはナポリのグワッポであり、イタリア王国政府はそんなグワッポに町の治安維持の責務を託したというわけなのだ。まさにヤクザのことはヤクザに任せる。どこの国も近代化の過程で同じ道をたどるのかもしれない。権力(potere)とは暴力装置(potere)なのだ。