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マルコムXのharu3uのレビュー・感想・評価

マルコムX(1992年製作の映画)
4.5
“X”とは遡って知ることのできない、遠い故郷アフリカの姓の象徴。

1960年代公民権運動の指導者といえば、キング牧師とマルコムX。前者が白人と黒人が手を取り合うことを目指したのに対し、後者は黒人が白人社会と決別し独立することを訴えた。『X-MEN』のプロフェッサーXとマグニートーのモデルとなった二人ですね。
本作はそんなマルコムXの伝記映画であり、長らく“人種的憎悪を振りまく暴力主義者”と語られてきた男の評価を変え得る、スパイク・リー監督渾身の意欲作です。

今の時代に島国育ちの私が観ると、白人という人種全てが悪であるというマルコムXの思考は短絡的に聞こえるし、繰り返し語られる過激な黒人至上主義にも辟易しちゃう。。
しかし先祖代々続いた黒人差別と彼らが誇りを否定されてきた歴史を思えば、植え付けられた負け犬根性を正すためには、それくらい強烈なカウンター・パンチこそが支持を得たというのも理解できます。実際マルコムXの生い立ちは、彼を反白人主義へと駆り立てるのに十分な動機がありました。

とはいえ、被害者意識が全面に押し出された映画ではなくて、黒人に対する戒めも含んでいる。良いバランスだったのに、最後のスパイク・リーの主張は蛇足だったかな。。
キング牧師にしろマルコムXにしろ、揺るぎない信念を持つ高潔な指導者であったことは、本作を観れば十分に伝わります。
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