みちみつる

ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド ゾンビの誕生のみちみつるのネタバレレビュー・内容・結末

3.7

このレビューはネタバレを含みます

ゾンビ映画の金字塔であるジョージ・A・ロメロ監督『ゾンビ3部作』の1作目。
現代にも通ずるゾンビ像(死者が蘇る・動きが遅い・人肉を喰らう・噛まれた人もゾンビになる・頭を撃たれると死ぬ…etc)を確立させた超偉大な作品。
(ちなみにこの作品以前にもゾンビ自体は存在したが、ブードゥー教の儀式で死者を蘇らせ、使役していた奴隷のような存在らしい…モダン・ゾンビ像とはかけ離れた特徴を持つ)

低予算かつ50年前の作品であるため、全体的に白黒で画面は地味、チープ感の強い音楽、ゴア描写も手作り感満載だしテンポが遅く感じる場面もある。しかしそれでも尚、ゾッとする恐怖を味わえるシーンもあり特に終盤の畳み掛けは素晴らしい。皮肉めいた結末は衝撃的で、当時の時代背景もあり痛烈な社会風刺が読み取れる。

なにより、この映画こそゾンビ映画の元祖であり、ゾンビ映画のすべてが詰まっていると言っても過言ではない、と個人的には思う。
姿形の同じ人間が人食いの怪物へと変化し、みるみるうちに増殖していく恐怖。大量のゾンビに囲まれ逃げ場の無い絶望感。極限状態でも生じる人間同士の対立。怪物となった肉親に襲われる悲劇…『ゾンビ』という存在が生み出す様々な人間模様はゾンビ映画の魅力のひとつでもあるが、パイオニアである今作からもその魅力を存分に味わうことができた。

肝心のゾンビであるが、メイク技術が発達していない時代だったのか、生者とほぼ変わらない見た目をしていたのは少し残念。しかし生きている人間とほぼ変わらない見た目をしているからこそ、逆に恐怖を身近に感じられた気もする。
また、まだゾンビ像が完全に定まっていなかったのか、攻撃されて手を抑えて痛がったり、石を持って殴るなど少し知能が高いところを見せてみたり、火から逃げ惑ったりしている姿はなんだか新鮮で愛おしさすら感じる。

個人的に恐怖を感じたシーンは、車の炎上で死亡したカップルをゾンビたちが貪るゴア描写。
前述のとおり手作り感は強いのだが、白黒で画面が暗く、詳細が見えないからこそ逆に想像力を掻き立てられ、不気味なワンシーンとなっていたように思う。
あとは、定番ながら一軒家に大量のゾンビがなだれ込むのはやっぱり怖い!

低予算ながら、画期的なアイデアでそれをカバーしている傑作。
そして、いちゾンビ映画ファンとして天国にいるであろう(ひょっとしたら、ゾンビ化しているかもしれない!?)ロメロ監督に伝えたい。

ゾンビという魅力あふれるホラーアイコンを生み出してくれて、そしてゾンビ映画の基礎を作ってくれて、ありがとうございます!!