爆裂BOX

ツイステッド・ナーブ 密室の恐怖実験の爆裂BOXのレビュー・感想・評価

3.8
精神薄弱者を装い、ある下宿にやってきた青年マーティン。彼の目的は義理の父親を殺害することで、それを知った下宿の娘スーザンは真相を確かめようとする…というストーリー。
ロイ&ジョン・ボールディングによるサイコスリラーです。最初にVHSで発売された時のタイトルが「密室の恐怖実験」だったようですが、「密室」も「実験」も出てきません。
青年マーティンは精神薄弱者を装い、彼に同情した娘スーザンと下宿を営むその母親ジョーンをたらしこみ、下宿する。彼は義父殺害の完全犯罪を目論んでいたが、次第にその企みは綻びを見せ始め、破滅へ向って行く、という内容です。
冒頭で「ダウン症や精神異常と犯罪に科学的な関連はない」とテロップとナレーションで言明されますが、確かに作中の遺伝学の講義のシーンやマーティンの異常性にそれを絡めた所等差別や偏見を助長するととられても仕方ない所あるので、今じゃ絶対無理ですし、あんな説明あるってことは当時でもかなり物議かもしたんでしょうね。
主人公マーティンは親が金持ちで(と言っても義父の金のようですが)学業成績も優秀で頭も切れるけど、母親に溺愛されて育ったせいか友達もおらず部屋に籠ってぬいぐるみ抱いてたりと幼児性が抜けてない何処かアンバランスな青年で、万引きをして捕まって咄嗟に精神薄弱者を装い、巻き込まれてその場に居合わせた下宿屋の娘スーザンに助けられて彼女に惹かれていきます。義父に家を追い出されてからは精神薄弱者のジョージイとしてスーザンとその母ジョーンの気を引いて取り入りながら義父殺害を計画していきます。とにかく冷酷で狡猾なサイコパスマーティンと子供の様に無邪気で傷付き易いジョージイを演じ分けて存在感示すハイウェル・ベネットの名演が最大の見所と言えますね。童顔活かして純粋な子供みたいな表情作りながら、用意周到にアリバイ工作したり、でも完全犯罪目指しながらも結構雑な所あるのが逆にリアルに感じました。思い通りにいかなかったらすぐキレる所も何しでかすかわからない怖さ感じさせます。彼が歩きながら吹く口笛はバーナード・ハーマンが手掛けた映画のテーマ曲でもありますが、その軽妙なメロディは見終わった後も耳にこびりついて離れなくなります。「キル・ビルVol1」でも使われてましたね。
義父の殺害計画は中盤前くらいでアッサリ達成しますが、それよりもジョージイを子供のようだと思って可愛がるスーザンと、彼女に恋して執着し、近づく男に敵意向けるマーティン、熟れた肉体を持て余してジョージイを誘惑するそぶり見せるスーザンの母ジョーンの、いつ崩れるかわからない危うさ溢れた関係がスリリングでした。
ハサミを突き立てて義父を殺害したり、斧をジョーンに向って振り下ろしたりしますが、年代的にも規制が厳しかったかゴア描写などはないですが、物置小屋からノコギリ引く音が聞こえるシーンでこちらの嫌~な想像力を刺激してくれます。
皮肉屋なジェリーやインド系の紳士な医師シャシ等下宿人もキャラ立ってて面白かったです。
スーザンがとある切欠でジョージイに疑いを抱いてその正体を探り始めてから物語は急展開迎えていきます。正体見抜かれたと悟ったマーティンが迫っていく中で、他の下宿人はそれに気づかない所もスリルありました。
最後の皮肉な幕切れも印象深いです。演じてたはずが、最後にはそうなってしまうとは…
今では難しいテーマを扱った、サイコスリラーの佳作だと思います。