半兵衛

白昼の無頼漢の半兵衛のレビュー・感想・評価

白昼の無頼漢(1961年製作の映画)
3.7
混成外国人による悪党グループの、様々な思惑を持った一癖も二癖もあるメンバーによるスリリングな駆け引きや、緊張感のある演出とフィルムノワールを思わせる作風がたまらない深作欣二の長編デビュー作。胡散臭い英語と威圧感でグループを統率する丹波哲郎の悪役ぶりがハマっていて、彼の不気味な存在感がハードな作風を大いに盛り上げる。

深作欣二特有の冴えた編集術はこの頃から健在で、現金強奪に気づいたヤクザグループに取り囲まれた丹波が逆転するくだりや、現金強奪シーンからヤクザグループとの戦いまでの後半など無駄のないスピーディーなカッティングが冴え渡っている。また深作の代名詞となる手持ちカメラは無いものの、横の構図を巧みに使ったカメラワークや、斜めに傾いた映像も効果的に使われている。

ただ物語が現金強奪を実行する後半までグループ内での駆け引きがメインになっていて、誰が誰とくっついたかを長めに描いているので途中飽き気味になってくるのが難。あと途中で出てくる中国人のボスのくだりはいらない気もするし、丹波と会話を終えたボスが車を降りた途端国会議事堂がバーンと映るシーンはあまりにも露骨すぎて苦笑してしまった。

個人的には『グループがそれぞれの思惑から分裂し、殺しあっていく』という物語の本筋が、のちの深作欣二の作品で何度もループされて使用されていることが気になった。そう思うと遺作の『バトル・ロワイヤル』は深作にとって原点回帰だったのかも。『白昼~』も『バトル~』もヒロイン(前者は中原ひとみ、後者は前田亜季)が汚れた世界で聖女のように君臨し、殺しあう人間たちの諸行無常を見守る存在となっているのが興味深い。
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