千年女優

終の信託の千年女優のレビュー・感想・評価

終の信託(2012年製作の映画)
4.0
不倫関係にあった同じ職場の同僚に捨てられて自殺未遂騒動を起こした女医の折井綾乃。好奇の目を向ける院内にあって唯一優しさを見せたぜんそく患者の江木秦三と心を通わせた彼女が、彼の安楽死への要望を聞いて遂に訪れたその日、心肺停止状態に陥った彼を前にして情愛と医師の務めとの狭間で揺れ動く様を描く周防正行監督作品です。

安楽死の正統性が争点となった実在の事件「川崎協同病院事件」を原案とした朔立木の同名小説を原作に、『それでもボクはやってない』の周防監督が娯楽作にしろ社会派にしろ「日本」独自の文化や問題を取り上げる彼らしく本国の尊厳死や安楽死の法的解釈の実態を、傷ついた男女によるプラトニックなラブストーリーと共に描いています。

恋物描写は些か前時代的ではあるものの周防監督の日本人として日本を突き詰める姿勢は素晴らしく、作中にもある通り東海大学安楽死事件で横浜地裁は要件を提示しますが、実際に直面した時この法的解釈やましてやニュースを見ての感情やイデオロギーでの安直な考えでは到底及ばない、深い苦悩が待ち受けている事を思わされる一作です。
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