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北極星のmhのレビュー・感想・評価

北極星(1943年製作の映画)
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ハリウッドの巨匠ルイスマイルストンが手がけた数ある戦争ものの中でも、「親ソ連」という変わり種。
ただ、このあたりのメカニズムはよくわかる。反戦映画の金字塔「西部戦線異常なし」はWW1ドイツ軍視点だったし、それをものにした張本人――ルイスマイルストンの出身はロシア帝国。
だったら、ソ連の農民視点の反戦映画も当たるんじゃないかと考えるフィルムメイカーがいたってなんらおかしくない。
イデオロギーの違いはあっても反ファシズムは一緒だし、ソ連だってアメリカと同じく連合国側だしね。
そんなわけでこの不思議なバランスの反ファシスト映画が生まれたんじゃないだろうか。やがてレッドパージのころを迎えると、この映画が原因で監督は大変だったとのこと。

楽園のようなソ連(ウクライナあたりとのこと)の集団農場が舞台。
前半はミュージカル仕立て。作詞はガーシュインの兄。
幸せな若者カップルがキエフに旅行に行く途中で、ドイツ軍がバルバロッサ作戦でやってくる。
後半は、空襲で死んだり、目が見えなくなったり、ドイツ兵を手術するため血を抜かれて死ぬ子どもがいっぱい(血を抜きすぎたってなにそれ!)いたりで、かなりめちゃくちゃ。
この映画のあとに珍作「パープルハート」が生まれるけど、その前兆がすでに見て取れる。
農民たちは立ち上がって反撃を開始してエンドなんだけど、このあたりはアインザッツグルッペンによる民族浄化がすさまじかった地域。1932年から1933年にかけてはホロモドール(ウクライナ大飢饉)も起きている。
エンタメ映画だからハッピーエンドになってて良かったとか簡単にはいえないくらいの暗い歴史がある地域なので、エンドマークのあと、かなり複雑な気持ちになった。
あと、別タイトルとして登録されてる「電撃作戦」は、この映画のことですね。未登録の映画や、映画データが間違ってるとかにはたまに出くわすけど、二重登録されてるのは初めて見たかも。
なんだかんだで面白かったけどね!
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