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ハードエイトのSPNminacoのレビュー・感想・評価

ハードエイト(1996年製作の映画)
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ラスベガスのカジノで、ルーザー同士が人生の負債を挽回するギャンブル。欲深さと情け深さが表裏一体の人間模様は、『ブギーナイツ』『マグノリア』へと繋がってそう。
負けっ放しの人々は勝ち急いで墓穴を掘る。金があっても怖気付く貧乏性が惨めだ。ジョンCライリーや、カジノで出会ったグィネス・パルトローもサミュエルLジャクソンも負け犬である自分しか知らず、幸せや満足を知らないから引き際がわからない。代わりにしなくていいことをしてしまう。みんなウロウロ回遊しながら不夜城に閉じ込められている。
一方、ジョンCに必勝指南する紳士フィリップ・ベイカー・ホールは、守護天使なのか裏があるのか?となかなか手の内を見せない。カジノを歩くのは流れるような長回し1ショット。彼は余計なものは頼まない。静かに落ち着いた声で相手の話を聞き、じっと待つ。明かされるその目的や勝負の付け方は今観ると少々野暮ったいのだけど、ベイカー・ホールの佇まいがとにかく渋い。
負け犬たちはそこを出てもどこへ辿り着くのか、吸い込まれるような闇があるだけ。夜のネオン、煙草の火、車の外の合成っぽい背景が思わせる古典的ノワールなルックと、昼のダイナーの日常感がいい塩梅の落差。直接話に関わらないのにフィリップ・シーモア・ホフマンの場面(まさに負け犬の遠吠え)の扱いは特別だったな…。
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