あんじょーら

動くな、死ね、甦れ!のあんじょーらのレビュー・感想・評価

動くな、死ね、甦れ!(1989年製作の映画)
4.0
第2次世界大戦直後のロシアにある収容所に併設されている村が舞台のモノクロ映画です。主人公の12歳の少年、母と2人暮らしのワレルカは少年期のどこにももって行きようがない感情を日々何処かにぶつけて生きています。だからこそトラブルが絶えないわけですし、トラブルを起こしてもワレルカの心に満足に満たされることもありません。そんなワレルカの近所に住む聡明な女の子のガリーヤは広場の市場で大人相手に熱いお茶を売ることで小遣いを稼いでいます。ワレルカも真似たりしてはいるもののガリーヤほど上手くいきません。そんなガリーヤに嫌がらせをしたりしてしまうワレルカではありますが、ガリーヤは普通に接して助けてくれます。それでもワレルカの感情の起伏は大きく次第にエスカレートしていきます。イースト菌を使った事件から果ては列車に関する出来事まで...


学校で、収容所(捕虜は当然日本人)で、知らなかった世界が広がってゆくワレルカとそのワレルカの危機を救ってくれるガリーヤの目を通して、大人の世界と子供の世界の、交差と差異と、純粋と邪、打算と狂気、を斬新なカメラワークと映像で分からされます。世界との接し方を学んでゆくワレルカと、その導き手であるガリーヤの間の子供とも言えない、そしてもちろん大人ではない時期独特の雰囲気と、好意と呼ぶにはまだその萌芽さえおこっていない状態の空気を掬い取っています。


ワレルカの、ガリーヤの、拙いがそれでいて今、この世界から受ける様々な影響から自分を立たせているところが非常に好ましく思いました。収容所の中の日本兵、ロシア人の人々、収容所に収監されることを恐れる人々の生活、ある配給をめぐる白いパンをめぐるシーンの異質さ、そして衝撃のラスト、非常に心に残る作品でした。


何度も差し込まれる線路のシーンはどれも非常に好きですが、やはり最後の線路のシーンの凄さが飛びぬけて素晴らしかったです。また白いパンのシーンの映像も特別凄かった。


映画が好きな方にオススメ致します。