たこ

SOMEWHEREのたこのレビュー・感想・評価

SOMEWHERE(2010年製作の映画)
3.0
何があるわけではないけれど、ずっと見てられるような映画でした。セリフのないときに漂うジョニーの哀愁がたまりません。ヒューマンドラマの映画って、日常生活の中の一部分だけを切り取った、ダイジェストみたいなものがほとんどだと思います。例えば、仕事する場面があったとすれば、ミスして上司に怒られたり、仲のいい同僚と話をしたり、クレーマーに文句を言われたり、といったシーンは流れます。でもそんな出来事の間のなんでもない時間は、スクリーンには映しません。それが日常と映画との違いだと思いますが、この作品ではそういった"映えない"瞬間もずっと流れていました。だからこそ、ジョニーの物悲しげな雰囲気がリアルに伝わってきたのかなと思いました。自分が男だということもあり、どうしても彼の目線で見てしまいましたが、クレオは何を思っていたんでしょうか。そこを取りこぼしてしまう僕は、将来ジョニーのようになる可能性があるのかもしれません。でもえげつない成功して富も名声も手に入れるけど、結局ひとりぼっちで誰もわかってくれへんみたいな、スター特有の苦悩を1回味わってみたいです。それで、うっすいこと書いたエッセイ本を出版するか、ファンが深読みするような、ダブルミーニングともとれる詞をメロディーに乗せるかして、ゴシップ誌にあることないこと書かれたいです。そうして事実上の引退みたいな感じで表舞台からは姿を消すんです。忘れた頃にちょっと調べてみたら、ありのままの自分を受け入れてくれるコミュニティで、ただ趣味をのびのびやっている。そういうものにわたしはなりたい。
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