すずす

傷だらけの山河のすずすのネタバレレビュー・内容・結末

傷だらけの山河(1964年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

永田雅一製作、石川達三原作、新藤兼人脚本、山本薩夫監督。都の西北・埼玉辺りの鉄道敷設の経営者をモデルに、非道な実業家とその家族、妾、妾の家族のドラマを描いた社会派ムービー。

モデルは明らかに西武鉄道の創業者である堤康次郎。堤清二、堤義明らしき息子、競合として東急電鉄の五島慶太らしきキャラも置かれている。

以下は物語。

妾の家にきた偉そうなオヤジ・有馬勝平(山村聰)。妾の子で大学生がうんざりしている。
有馬は電鉄会社の社長で、会社はコングロマリット化し、土地買収による沿線開発を、事業の柱にしようとしている切れ者で、抗議に訪れる人々を金で黙らせている。
有馬は女好きで、打合せのお茶汲みにきた社員の福村(若尾文子)を見そめる。福村はパリ留学を夢みる貧乏画家(川崎敬三)との暮らしに嫌気を感じ、有馬の提案した相方のパリ留学を条件に有馬の四番目の妾となる。

会社では新線の開拓と土地買収のプロジェクトを勧め、その過程で社員に自殺者も現れるが、闇に揉み消す。
家庭では、父を嫌い精神を病んだ過去を持つ、出来の悪い次男がゴルフ場で出会った、福村に、父の愛人と知らず好意を抱く。
また、妾の息子が2人は大学で知り合い関係を持ち始める。一人はライバル会社を受験し、もう一人は妾を止め、一挙に造反する。

有馬は、競合の香月(東野英治郎)との路線争いに勝ち、新たな愛人を作り、沿線への学校建設を機に、藍綬褒章を受賞するに至る。
しかし、その学校は建設途中に火災に遭い、次男が犯人として自首する。
有馬の家庭は崩壊しているが、事業家・有馬は次へ向かうのだった------

優れた点は、配役と演技。山村聰は生々しく、常に従うしかなかった穏やかな妾の丹阿弥谷津子が最後に掌を返す場面が特に素晴らしく思えた。
駄目な点は、構図などの美的感性に冴えが見られない点かな!?
山本薩夫色というより、永田雅一の色の様にも感じました。昔のセルズニック風というか!?
すずす

すずす