すずす

人間の境界のすずすのネタバレレビュー・内容・結末

人間の境界(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ポーランドの女性監督として数々の名作を残すアニエシュカ・ホランド監督の昨年度ヴェネチア映画祭の審査員賞。

2021年からポーランドとベラルーシ国境地帯で起こった、難民の悲劇が描かれます。終幕は22年6月、更なる悲劇の始まりで映画は終わります。

ルカシェンコが対EU圏に対する牽制として、クルド難民を移民兵器と称し、ポーランド国境から不法入国させる政策をとった事で、ポーランドのドゥダ大統領が反発。ポーランドの国境警備隊は移民をベラルーシに送り返す策を取った為に、クルド難民たちは何度も越境を切り返し、病に倒れていった。
時には遺体を敵の国境に投げ入れ、押し付け合う事態にまで至り-----

構成が上手い。
映画はチャプターに分かれ、難民の章から始まる。シリアからの家族とアフガンからの中年女性、次に、国境警備隊の家族に移行する。ポーランド国内で酷い仕打ちをしていると新聞に叩かれ、町の人から白い目で見られ、身重の妻は家を出る。そして、次が活動家。難民を救おうと戦う女性一派と若者たちだ。この構成はドラマチックというより、リアリスティックなドキュメント的な流れになっていて、生々しさを増長させている。
この題材だけに、ドラマをドラマチックに作る必要はない。素材自体が十二分に胸を打つドラマだから、過剰な音楽も、小細工も要らない。

重厚なコントラバスによるクラシックの調べに乗ってと、観る者の胸は押し潰される。
忘れ難い映画だ。
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