半兵衛

ギリシャからの帰還の半兵衛のレビュー・感想・評価

ギリシャからの帰還(1941年製作の映画)
2.9
イタリア製戦意高揚映画は初めて見たけれど、戦争への共闘というこの手の作品に必要なメッセージを呼び掛けないのはお国柄なのか監督のせいなのか。

主人公が空軍に入って仲間とともに戦う前半はいかにもプロパガンダな内容で、実写と記録映像と役者の芝居を巧みに組み合わせた戦闘シーンは迫力満点で今見ても臨場感がある。並列して空中を飛ぶ戦闘機の映像はカメラアングルといい決まりまくっている。

それが中盤主人公が敵に人質として捕らえられてから流れが変わってくる。敵地でぞんざいに扱われる人質たちの描写はまだわかるとして、戦争に翻弄される庶民の様子をドキュメンタリータッチで長く描いているので敵地でさ迷う主人公の様子も相まって厭戦的な気分に。ちなみに中盤戦争の場所となる村から逃走する人々とそれを先導する兵隊(主人公たち人質も)たちの群れをドイツ軍が空襲する場面があるが、地面ぎりぎりに飛ぶ戦闘機(もしかして本当にドイツ軍で使われていたやつ?)、膨大なエキストラの中を勢いよく爆発する火薬、ここぞで挿入する記録映像によってド迫力の場面に。このとき空襲の爆撃で橋が崩落するのだがちゃんと破壊された橋とその周辺を原寸大で再現していたり、死んだ人たちを兵士などが次々と運ぶ様を淡々と撮っているのがリアルな感覚を観客にもたらす。

一応ラスト主人公が敵の飛行機を盗んでの脱出劇が用意されているが、戦意高揚作品としての体裁を無理やり整えたところがありそれまでのドキュメンタリータッチと違っているので蛇足みたいな感じに。当時の人もさすがにこれは興奮しなかったのでは。

脚本家の一人にミケランジェロ・アントニオーニがいるのに驚く。
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