痛みの完成型
タンスの角に足の小指をぶつけると非常に痛いですね。
小指があることに憤りを覚える痛さ。
1度は経験したこと、あるでしょう。
でも、こんなのが蚊にさされたレベルに思えるくらい痛い映画が本作なんです。
インドネシア産のアクション映画は非常に痛かった。
そのストーリーは至ってシンプル。
犯罪集団が巣窟としているビルでSWAT部隊が死闘を繰り広げます。
てっぺんにいるラスボスを倒しに最上階を目指すという非常に分かりやすい話。
これなら、子供から大人まで楽しめますね。
んな、訳がありません!
痛い、エグい、激しいの三拍子そろったアクション。
痛々し描写に耐性のないかたは要注意です。
でも、映像は非常にスタイリッシュで音楽もリンキン・パークのマイク・シノダが担当しているので、都会っぽくおしゃれ。
これなら、シティーボーイのマストアイテム的な映画にもってこいですね。
んな、訳がありませんってば!
肉弾戦に次ぐ、肉弾戦。
汗と血と暴力にまみれる1時間半。
これは結構、気合いのいる映画。
終始、力みっぱなしです。
とにかく、痛い描写のバリエーションの豊富さに唖然とします。
パンチのようにナイフで滅多刺しにされたり、
背中から階段の手すりに落下&激突したり、
折れた扉が首に刺さったり。
止めの刺し方にダメ押しの一発が多いので、もはや親方勢から苦言を呈されるのは必至。
確実に敵を再起不能にしてやろうという意気込みに溢れてます。
その格闘シーンにおけるアクション。
シラットというインドネシア伝統武術をベースに組み立てられているそう。
スピードや動き、威力など、全ての面において他のいかなる映画の格闘シーンをも凌駕しています。
また、主演のイコ・ウワイスが綿密に設計したアクションシーンでの役者の無駄のない動きにはただただ目を奪われてしまう。
そのスピード感あふれるアクションは、ジャッキー・チェンのようでもある。
しかし本作の場合、そこにバイオレンス要素がふんだんに盛り込まれているので、痛みがダイレクトに伝わって来るほどの生々しさがあります。
こんな感じのアクションシーンがひたすら続きます。
ほんとにずっと闘ってるんですよ。
終盤の強敵との死闘。
これがほんとに凄い。
口がポカーンとなるレベル。
敵を演じるヤヤン・ルヒアンのタフさは尋常じゃありません。
でね、どのアクションシーンでも演者側は至って真剣そのものなんですね。
この映画、どうやったら人は痛いだろうってことを真剣に真剣にみんなで考えて、その効果的な見せ方を徹底的に研究して作られているの。
そのこだわりの痛いアクションシーンが、シンプルなストーリーの上に絶妙に配置されている。
僕たち観客をどうにかして楽しませようとしてくれているのが分かるんですね。
なんだかそこまでされると、こちらも真剣に見ようって気になって、アクションシーンのひとつひとつにありがとうって言いたくなるんです。
痛々しい描写なのに、なぜか感謝したくなる。
もう、変態レベル。
それほど製作陣の魂を感じる作品に仕上がっています。
もう、変態でいいです。
ありがとうと大きな声で叫びたい!
そんな作品です。
痛みの完成型。
見させてもらいました。
もう、小指をぶつけても、もはや痛くないかもしれない。
いやいや、それはそれで痛いです。
現実世界での痛みの完成型ですね。