やしまんく

LOOPER/ルーパーのやしまんくのネタバレレビュー・内容・結末

LOOPER/ルーパー(2012年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

劇場での観賞から2度目。

ファーストカットから連なる一連の「お仕事」シーン、からのタイトルバックとてもかっこいい。
このへんがもうセンスありまくりで「こりゃ面白いでしょ」とガッチリつかまれちゃうよね。2回目でもしっかりシビれた。

その後のテンポよく繰り出される京楽的な日常の繰り返しも好き。
いずれは自身の手で未来の自分を殺すことを宿命づけられたルーパー達。
限られた時間を余さず使い切るかのように生きる、向こう見ず野郎ばかりなのである。
刹那的な様子は自分の最期から目を背けようとしているようにも映ります。
そう考えると少し切ないね。なかには「俺だって、好きでこうなったわけじゃないんだぜ……」という方もいらっしゃるでしょう。主人公がそうか。

ドラッグをキメて派手なクルマを飛ばすのは『時計じかけのオレンジ』を彷彿とさせる。
しかし、アレックスだったらすんでのところでギリ跳ね飛ばしてそうな浮浪児っぽい子供を前にしてこちらの主人公ジョーは車を停め意味深な視線を投げかける。
(過去の自分と重ね合わせているということには2回目で気づいた。)

ジョーのタイドアップにレザージャケットというファッションもかっこいい。
未来から来た人ではあるが上司から「時代錯誤的だ」と指摘され「ファッションだから」と返しているので彼のスタイルだというのがわかるのもいい。

友達(の未来の姿)のコワすぎる殺され方、初回でわかっていた分そのシーンに差しかかるところで身構えてしまうくらい何度みてもイヤすぎる。

2013年の初回観賞後によく覚えていたのはそういう部分。





今回は自分の人生に固執する今ジョーと守りたい人のために奔走する未来ジョーの対比に目が行きました。

今ジョーは自分が生きる今この瞬間だけのために未来ジョーを殺すことを考える。
生きるということを知らなかった自分がやっと手にした人生。守りたいのはただそれだけ。
その過程では他人の家の子供が死のうが関係ない。

未来ジョーは自分のことしか見ていない今ジョーを「坊や」だと諭す。
未来ジョーには自分の人生よりも大切なものができたのだ。
未来ジョーは守るべきもののために命を懸け、邪魔する奴を殺す。自らの心を殺す。他人の家の子供も殺す。
見据えるのは愛する妻、そして彼女と過ごした日々。
未来ジョーは様々な意味で今ジョーの先にいる存在といえる。

ところがサラとシド親子を交点としてこの二人の視線はやがて交差し、位置関係も覆す。

今ジョーは親子との関係性を築いていくうちに自分の人生から二人の人生に対しても目を向けるようになる。

一方の未来ジョーは現在を受け入れることができず、時を遡り原因となる存在を取り除こうとする。
彼の視線は現在から過去に向かっていた。

今ジョーが二人の人生に視線を向けた時、未来ジョーの視線と点を結ぶ。
視線は点の先に向けられ、そこに目の前に存在しない未来を見つける。
未来ジョーが見ていない未来、自分が存在しない未来。
自身の現在のために他者の未来を奪うのではなく、他者の未来のために自身の現在を捧げる。

2021年に2回目を観て受け取ったのは今を生きる者が未来の自分を越えた選択をするまでの物語でした。